2018 Fiscal Year Research-status Report
相対論的磁気流体シミュレーションで迫る活動銀河核ジェット形成と伝搬・放射の物理
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18K03634
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水田 晃 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (90402817)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブラックホール / 降着円盤 / 宇宙ジェット / 磁気流体力学 / 一般相対性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホール降着流では降着円盤内部で磁気回転不安定性によって磁場が増幅し、磁場が増幅され飽和すると磁気散逸によって磁気エネルギーは熱や運動エネルギーに変換され、再び熱圧優勢状態となり、やがて残った磁場を種磁場として新たに磁場増幅期となる。この磁場の増幅と減衰というサイクルが降着円盤内部では準周期的に繰り返しおきている。磁気散逸によって磁気エネルギーが解放される時には赤道面近くから降着円盤鉛直方向に磁場が放出され降着円盤外部にまで達することが降着円盤の蝶形図などから示されている。特に高ブラックホールスピンの場合、降着円盤内縁付近から放出された磁場はブラックホール上空に生じる低密度領域に伝わり、ポインティイグジェットとして伝搬する。そのため、ジェットのポインティング光度には降着円盤内縁付近での磁場増幅の時間スケールと同じ時間変動が刻印される(Mizuta et al. (2018))。一方で磁場増幅の特徴的時間スケールはブラックホールスピンパラメータに依存する。ブラックホール無次元スピンパラメータが1(最大)に近づくと降着円盤内縁半径はブラックホール半径に近づき、小さくなるにつれブラックホールから遠くなり、磁場増幅の時間スケールは、半径が小さい程早い。ブラックホールスピンをパラメータとした一連のブラックホール降着流の一般相対論的磁気流体シミュレーションでは、線形解析で得られた磁場増幅の時間スケールを確認し、スピンパラメータが小さい程磁場増幅の時間スケールが長く、ブラックホール上空の低密度領域に伝わるポインティング光度の時間変動も同様となり、降着円盤内部での磁気活動がジェットのポインティング光度に反映されていることを確かめた。また、ブラックホールスピンパラメータが小さい程、降着円盤の内縁半径が大きくなり、降着円盤から鉛直方向に伝播する磁場はジェット領域に伝わりにくくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール降着流における磁気活動の時間変動性のブラックホールスピンパラメータの依存性をシミュ―レーションで明らかした。降着円盤の最内縁半径がブラックホールにより近くなる高ブラックホールスピンの場合で早い時間変動性が見られ、ジェットのポインティング光度も質量降着率に対して高効率であることが分かった。ジェット根元における明るさの時間変動性は近い将来の詳細観測で明らかにされると期待され、このような観測に先立ってどのようなイメージとなるかを明らかにすることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール降着流の一般相対論的磁気流体シミュレーションによって、降着円盤内部、極軸に沿って伝播するジェットのポインティング成分の時間変動性や光度へのブラックホールスピンパラメータ依存性を議論する結果を論文にすると共に、これらの計算結果を観測した時にブラックホール周辺、上空で生じている電磁ジェットがどのように見えるかという観測的可視化を進め、既報済みの観測結果と比較するだけでなく、これまで観測で報告されていないジェットの根元がどのように見えるか、時間変動性はどうかなどを予言していく。 より高精度の計算のため、シミュレーションコードで用いている数値流束のスキームとしてより、数値拡散の小さいものを採用し、ブラックホール降着流の計算に応用していく。
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Causes of Carryover |
シミュレーション結果を論文化するなかで、更に高解像度の計算を行う必要があると判断し、計算時間を要した。そのため論文化に至らずめ論文出版費として準備していた予算を翌年度に繰り越すことになった。
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