2020 Fiscal Year Research-status Report
相対論的磁気流体シミュレーションで迫る活動銀河核ジェット形成と伝搬・放射の物理
Project/Area Number |
18K03634
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水田 晃 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (90402817)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブラックホール / 降着円盤 / 一般相対論 / 磁気流体力学 / 宇宙ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
活動銀河核ジェットは銀河中心の超大質量ブラックホールと降着円盤の系から噴出するほぼ光速の絞られたアウトフローであり、相対論的ジェットとも呼ばれている。ジェットの駆動メカニズム関しては様々な理論モデルが提唱されているが、未だ議論が続く未解決問題の一つである。ブラックホールの回転エネルギーを引き抜くBlandford-Znajek機構や磁気遠心力を用いるBlandford-Payne機構などグローバル磁場が重要になる機構が有力である。一方で、降着円盤内部のような差動回転系ではわずかな種磁場が数回転で指数関数的に増幅される磁気回転不安定性が指摘され、理論的、数値シミュレーションなどで非線形段階の振る舞いが調べられている。そのため、降着円盤内部での磁場の増幅、増幅された磁場が降着流と共にジェットの根元に相当するブラックホール近傍にやってきた時の磁場の振る舞いの理解がジェット駆動メカニズムの理解には重要である。このような系を記述する一般相対論的磁気流体方程式を数値的に解き、系の時間発展を考える一般相対論的磁気流体シミュレーションを安定に長時間行うために、新しいコードの開発を行った。磁気流体部分を高次関数によるセル内補間をし、近似リーマン解法を用いる手法で時間積分をし、磁場の部分はdiv B=0 を数値的に保障するCT法によって時間発展を考えるものである。典型的な特殊相対論的、一般相対論的数値計算テストを行い、他のグループと遜色ない結果が得られており、最もアプリケーションに近い多次元での降着円盤解の問題を行っている。降着円盤内部での磁気回転不安定性を捕捉するには波長が円盤の厚みの1/100程度のモードの解像が必要であり高解像度計算が必須である。そのため、コードの高速化も行っている。完成したコードを用いてブラックホール降着流、特に系の時間変動に着目した問題に取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ブラックホール降着流の理解のために行われる一般相対論的磁気流体シミュレーションでは、回転するブラックホール周りに静水圧平衡状態の降着円盤(トーラス)を置き、そこに微小の熱的擾乱や弱磁場を初期条件として与えることによって、平衡状態を壊し、新しい準平衡状態での振る舞いを調べられている。このためには、長時間の系の時間発展を追う必要があり、そのためにより安定かつ信頼性の高いコードが必要となってくる。そこで、新たに一般相対論的磁気流体コード開発に取り組んできた。手法としては、セル内で高次関数による補間を行い、隣接するセル間を通過する数値流束を近似リーマン解法によって求め一般相対論的磁気流体方程式を時間積分するものである。メトリックテンソルをミンコフスキー時空とし、磁気流体コードのテストとして行われる1次元衝撃波管問題や、均一な磁場の元、円筒状の高圧ガスの爆発、円盤の回転問題などの多次元問題も行い、他のグループの結果と遜色無いことを確認した。また、カー時空を仮定し、解析解が求められている赤道面上での磁気降着流の定常問題も行った。一般相対論的問題で多次元問題となる降着円盤問題に取り組んでおり、これらをまとめてコードの論文化にも取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で記述した新しい一般相対論的磁気流体コードを用いてアプリケーションとしてさまざまな問題に適応していく。降着円盤内部での磁場の振る舞いを精度よく捕獲するには高解像度計算が必須であり、また、ブラックホールと降着円盤の系から生成されるブラックホール上空、極軸に沿って生じる磁場優勢ジェット領域と中緯度方向に出る円盤風の界面を精度よく解h必要もある。高解像度計算によって系の時間変動性が定量的に議論てきるようになることが期待される。降着円盤鉛直方向の磁場の時間進化をプロットした時に見られる、降着円盤でのバタフライダイアグラムでの繰り返し時間等がブラックホールスピンによってどのように変化するかを議論する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、研究会が現地開催されず予定していた学会発表の旅費等が不要になったため。
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