2020 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算による3核子力効果の解明とその宇宙核反応への影響
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18K03635
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀内 渉 北海道大学, 理学研究院, 講師 (00612186)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 原子核応答 / 宇宙核反応 / 3体力 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の宇宙にある元素の合成過程において、恒星内での放射捕獲原子核反応や、超新星爆発におけるレプトン(電子、ニュートリノ等)原子核反応は決定的な役割を成すことが知られているが、反応率が極端に小さいため、実験による検出が難しく、系統的な反応率の評価は理論計算に頼らざるを得ない。本研究は原子核の外場による応答を第一原理的に求めることで、信頼のおける宇宙核反応率の評価を行う。核子(陽子・中性子)多体系である原子核の精度の良い記述には2核子力だけではなく3核子力の寄与が重要であるが、実験・理論研究の困難さから未だ大きな不定性が残されている。そこで模型を仮定しない一貫した枠組みにより、原子核構造・反応における3核子力の役割を明らかにし、信頼のおける宇宙核反応率を評価する枠組みを確立することが目的である。 前年度は宇宙核反応で重要となるリチウム6の光吸収反応、すなわち電場による応答に関する微視的計算に関する研究を学術論文にまとめた。模型を仮定しな い6体計算を実行することにより、原子核の電場による励起機構についてクラスター構造の重要性を示唆する新たな知見が得られた。本年度はその観測可能性についての議論を進め、その成果は誌上論文に受理されたところである。また、恒星中の炭素合成において支配的なトリプルアルファ反応について、クーロン遮蔽現象と3体力の役割についての論文をまとめた。同時に様々なプローブを用いた原子核散乱、応答に関する手法の開発やその応用についての研究が大いに進展した。一連の成果は11編の査読付き誌上論文、8編の国際会議プロシーディングス、15件の国内外学術会合において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウム6、ヘリウム6の電磁あるいは核力応答についての研究が進展し、高エネルギー重イオン反応によって原子核の低エネルギー応答を研究するための知見が得られた。同時に、恒星中のプラズマ環境における炭素合成プロセスについて、クーロン遮蔽に対する3体力の役割についての理解を深めることができた。原子核の様々なプローブによる応答に関する研究が大きく進展した。これら一連の成果は全て査読付き誌上論文として出版されており、総合評価としておおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は宇宙核反応の主要プロセスである放射捕獲反応(原子核応答の逆反応)の微視的記述についての研究を進める。特に原子核クラスターの役割に着目し、宇宙環境中における3体力効果についての知見を得る。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により、予定していたいくつかの学会が中止あるいは延期されたため次年度への繰り越しが生じた。次年度も情勢を考慮した上で旅費として使用する計画であるが、難しい場合は数値計算用サーバーなどの物品等購入費に充てる。
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