2018 Fiscal Year Research-status Report
核子対相関と非束縛状態を基とした核構造の多様性の系統的解明
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18K03636
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
升井 洋志 北見工業大学, 工学部, 教授 (30396345)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 陽子中性子相関 / テンソル力 / 非束縛状態 / 不安定核 / クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
クラスター殻模型アプローチを用いて原子核内における核子相関のメカニズムを研究した。陽子-中性子対にはアイソスピンがT=1とT=0のチャンネルがあり、反対称性からT=1は0+、T=0は1+のスピン-パリティを持つ。一般に全体の核子数が偶数の原子核は基底状態が0+となることが普通であるが、陽子と中性子が奇数でかつ同じ数である核においては1+が基底状態となる核がある。これはT=0の相関が強くなるためであり、その条件を解明するため閉殻構造のコア核に陽子と中性子を付加し、フッ素(F)18、スカンジウム(Sc)42、銅(Cu)58についてクラスター殻模型計算を行なった。実験で得られている18F, 42Sc, 58Cuの基底状態はそれぞれ1+, 0+, 1+であり、18F, 58CuでT=0チャンネル(1+)が強くなっていることが期待される。 核子相関を精密に取り扱うためには相互作用にテンソル力を用いること重要である。相互作用を中心力のみにして計算した場合、コア核の変化による寄与の差があるにもかかわらずすべてT=0チャンネルが強い寄与を示し、1+が基底状態となった。これは、中心力のみではT=0チャンネルの相関を作り出すメカニズムが強く出過ぎるためであると考えられる。 そこで相互作用に現実的核力のテンソル部分を適用し、中心力に繰り込まれていたテンソルの寄与を強度パラメータの形で削減した計算を行うと42ScでのT=1チャンネルとの準位の逆転が再現できた。中心力のみの場合との大きな違いは、陽子-中性子対において軌道角運動量が2だけ違う軌道の組の寄与である。テンソル力はこの組について強い引力を示す。18F, 58Cuではこの組が十分に効くような価核子の軌道となっているのに対し、42Scでは軌道の間隔が大きいため陽子-中性子対はそのような組の寄与が弱いことを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は(I)現実的核力が引き起こす核子相関の精密な解析および(II)価核子の模型空間における非束縛状態が核構造に与える影響の解明の二つを研究期間である3年間で明らかにすることが目的である。それらの理論的解明にあたり「ガウス基底によるM-schemeクラスター殻模型的アプローチ(M-scheme COSM)」を計算手法の主軸とし、(a)核内での相関を微視的視点で解析、(b)コア核内での重陽子相関が価核子空間に与える影響の解明、(c)重陽子-重陽子相関を取り扱える模型空間への拡張、の三つを具体的研究遂行手段としてあげている。 ここまで、(I)と(II)の目的達成のため、(a)の相関の微視的取り扱いについて十分な議論および計算に基づくメカニズムの解明を行なってきた。現実的核力としてArgonne V8'と呼ばれる核力を用い、重要な寄与であるテンソル部分を用いて相関を解析した。テンソル力を取り入れることで高い運動量(エネルギー)の状態の記述が重要となる。高い運動量の状態は非束縛状態であるため、ガウス基底によって波動関数を展開し、非束縛状態が正確に取り入れられる枠組みによって相関の解明を行なった。 研究成果は国際会議ならびに国内の学会において発表済みであり、かつ現在学術論文としてまとめている状態にある。申請年数が三年でかつ大きく3つある研究課題(a-c)のうち残りが(b)および(c)の2つであることがから、概ね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
残りの課題として(b)コア核内での重陽子相関が価核子空間に与える影響の解明と(c)重陽子-重陽子相関を取り扱える模型空間への拡張、が挙げられる。今年度は主に(b)について進める予定であるが、(c)についてもある程度の準備期間が必要であるために同時進行で進める。 (b)ではコア核内の相関を「価核子の模型空間の部分的占有」という描像で記述する。占有される模型空間の算出においてコア核に対しM-Scheme COSMを適用する。導き出された結果を相互作用、あるいは禁止状態の記述に適用する。 (c)では二核子を対とする波動関数の模型を構築し、それに対し現実的核力を用いた構造計算の定式化を行う。
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Causes of Carryover |
国際会議に2回参加したが、両会議とも中国であったため旅費支出額が少なめになったことで次年度使用額が生じた。今年度も2回の国際会議参加を予定しており、かつ欧州開催も含まれるため旅費支出については問題無いと考えられる。
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Research Products
(5 results)