2018 Fiscal Year Research-status Report
Study of Argyles-Douglas theory based on quantum integrability
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18K03643
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 克司 東京工業大学, 理学院, 教授 (60221769)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超対称性 / 可積分性 / WKB解析 / 共形場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Argyres-Douglas理論と2次元量子可積分模型の非自明な対応を通じて4次元超共形場理論のダイナミクスを調べるのが本研究の目的である。今年度はまずOmega背景場のNekrasov-Shatashvili極限におけるArgyres-Douglas理論を考え、その低ネルギー有効理論の厳密解を記述する量子Seiberg-Witten曲線と量子可積分模型の関係について研究を行い, 以下の結果を得た。 A型のリー代数に基づくArgyres-Douglas理論の量子Seiberg-Witten曲線は多項式型のポテンシャルを持つシュレーディンガー方程式となり、そのWKB周期(量子周期)によりArgyres-Douglas理論の低エネルギー有効理論が決定される。 研究代表者はHongei Shu(東工大大学院生)とMarcos Marino(ジュネーブ大学教授)との共同研究において, 任意の多項式型ポテンシャルを持つ1次元量子力学における厳密WKB周期を決定する非線形積分方程式(熱力学的Bethe仮説方程式)を導出した。この方程式は従来の単項式型ポテンシャルで定式化されていたODE/IM対応の一般化を与えている。また1990年代にAndre Vorosによって予想されていたリサージェンス量子力学におけるRiemann-Hilbert問題の解を与えている。またこの方程式は厳密量子化条件と合わせると、多項式型ポテンシャルの量子力学のスペクトル問題を解く強力な方法を与えることが分かり, 応用としても今後大きな発展が期待される。 また研究代表者は大久保隆史(東工大大学院生)との共同研究で, Argyres-Douglas理論において最も基本的なタイプの理論であるN=2 SU(2) 超対称色力学のSeiberg-Witten曲線の退化で得られるArgyres-Douglas理論の量子Seiberg-Witten周期についてその評価をプランク定数の4次まで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
任意の多項式ポテンシャルの厳密WKB解析の解を与える熱力学的Bethe仮説方程式の発見は今後の研究の基礎となる研究であり、それが確立できたことは予想外の大きな進展である。Argyres-Douglas理論において, 量子化されたSeiberg-Witten曲線に対応する常微分方程式に基づいてそのWKB周期を量子可積分模型と関係づけることは, 単項式ポテンシャルのシュレーディンガー方程式のような特別な場合を除き, 20年以上にわたり解決が困難な問題とみなされてきた。今年度のHongfei ShuとMarcos Marinoとの共同研究により, 一般の多項式型ポテンシャルの場合が解かれたことはこの分野での大きなブレークスルーである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果である、熱力学的ベーテ仮説方程式とA型リー代数に基づくArgyres-Douglas理論の量子Seiberg-Witten曲線の厳密WKB周期の関係をより一般のリー代数に基づくArgyres-Dougas理論に拡張することを目標とする。 そのためにまずD型のリー代数に基づくArgyres-Douglas理論を目標に定める。この量子Seiberg-Witten曲線は, 負冪型のポテンシャルを持つシュレーディンガー方程式であり, ODE/IM対応の観点では, この微分方程式はより広いクラスの量子可積分模型に対応していることが期待される。本研究ではD型ポテンシャルに対応する熱力学的ベーテ仮説方程式を決定し, その量子WKB周期の性質を解析的および数値的な手法で明らかにしていく。さらに一般のリー代数への拡張を考え, 量子Seiberg-Wittenに付随する非線形積分方程式を導出することを目標とする。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進展しているが, 参加を予定していた国際会議(IGST2018)が都合により参加できなかったため。今後国際共同研究を進めるための旅費と数値計算用のPCの購入を予定している。
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