2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of the origin of Galactic cosmic-rays
Project/Area Number |
18K03647
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 裕 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10332165)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 銀河団 / 宇宙線 / AGN / 分子雲 / 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙最大の天体である銀河団の構造には一定の規則性(スケーリング則)があり、銀河団の形成史や宇宙論パラメーターを反映していると考えられている。また宇宙線に与えられる総エネルギーもこのスケーリング則に従っている可能性がある。そこですばる望遠鏡 HSC の重力レンズデータを用い、これまでにない精度でスケーリング則を導出した。またスケーリング則を理論的に解釈することで、銀河団内での AGN などによる加熱効果はこれまで考えられていた以上に強いことを明らかにした。これは AGN からの宇宙線供給の重要性を示す。 銀河団での宇宙線加速と比較するため、観測が容易な銀河系内の天体での宇宙線加速について調べた。超新星残骸が加速している宇宙線のうち、低エネルギーの MeV の宇宙線はガンマ線を放出しないのでその存在がよくわかっていなかった。一方、超新星残骸はしばしば分子雲と衝突する。そこで我々は、超新星残骸から分子雲内に MeV 宇宙線が流出し、そこで鉄原子と相互作用をして鉄輝線を生成するという理論モデルを構築した。このモデルに従って鉄輝線強度を予想したところ、既存の観測をよく説明できることがわかった。また新たに別の超新星残骸のデータを再解析したところ、このモデルの予想と合致することを確認した。銀河団での宇宙線は比較的低エネルギーのものが大部分と考えられ、分子ガスが存在する銀河団中心では同様に鉄輝線を生成する可能性がある。 ペルセウス座銀河団の中心にある AGN を ALMA 電波望遠鏡で観測し、ブラックホールの周囲に巨大な分子ガス円盤が存在していることを明らかにした。またこの円盤を通じてブラックホールにガスが供給されていることや、円盤の回転速度からブラックホールの質量を推定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
銀河団のスケーリング則についての研究から、銀河団での AGN 加熱効果がこれまで考えられていたより強いことがわかった。これは宇宙の構造形成と宇宙線を含む高エネルギー現象は密接に結びついていることを示す結果である。超新星残骸の研究からは将来の銀河団での鉄輝線観測について示唆が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
AGN による加熱が重要であることがわかったので、シミュレーションなどで具体的に確かめてみる予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスのため出張が取りやめになった。次年度に物品の購入に使う予定。
|
Research Products
(24 results)