2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the quark and lepton flavor structure by minimizing Casimir energy in extra dimensions
Project/Area Number |
18K03649
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 眞人 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183817)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 教寛 大分工業高等専門学校, 一般科理系, 講師 (40732946)
竹永 和典 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (50379294)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 余剰次元 / 標準模型 / カシミアエネルギー / 質量階層性 / 量子グラフ / 世代数問題 / クォーク・レプトン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績の1つは、1次元余剰次元をもつ5次元理論において、クォーク・レプトンの質量階層性をダイナミカルに生成する模型の構築に成功したことである。我々の模型において、余剰次元上の点状相互作用の位置がクォーク・レプトンの質量階層性に対して重要な役割をもつ。これら点状相互作用の位置は、我々の模型において真空エネルギーの最小化によって決まる。そして、真空エネルギーはカシミアエネルギーを計算することによって得られる。我々の模型の特筆すべき点の1つは、スカラー場の真空期待値が余剰次元依存性をもつことである。その依存性は余剰次元方向に対して指数関数的な振る舞いをもつことが明らかになった。我々の模型のこの指数関数的依存性が、クォーク・レプトンの質量階層性を導くことが示唆された。 もう1つの研究業績は、量子グラフ上での5次元ディラックフェルミオンの研究である。量子グラフは、任意の数の線分と頂点からなる1次元グラフからなる量子力学系のことを指す。量子グラフ上で量子論における要請を満たすために、頂点でどのような境界条件、あるいは、接続条件が許されるかが、我々の研究で明らかになった。この研究により、量子グラフ上の5次元ディラックフェルミオンを考え、4次元有効理論を求めることによって、4次元カイラルフェルミオンがいくつ現れるを明らかになった。また、この研究によって、5次元理論で余剰次元として量子グラフを考えることによって、素粒子標準模型に残された謎、すなわち、世代数問題の解決を与える可能性があることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の1番目に書いた項目が、本研究課題のメインの課題の遂行である。これは昨年度の研究をさらに発展させたものである。本研究課題ではまず初めに、5次元の余剰次元模型で我々のシナリオが上手く働くか どうかを確かめることであった。我々は点状相互作用をもつ5次元理論で、クォーク・レプトンを1世代ずつ含む模型を用意し、その模型に対してカシミヤエネルギーの最小化を行った。その結果、点状相互作用の位置が、全てのフェルミオンに対して等間隔で並ぶというのが、最適な配置であることがわかった。さらに解析を進めるために、ヒッグス場の真空期待値を厳密に解くことによって、真空期待値は一般的に余剰次元に依存し、指数関数的な振る舞いをもちうることがわかった。(実際に得られた解は楕円関数である。)この指数関数的な振る舞いはクォーク・レプトンの質量階層性を定性的に説明するので、我々のシナリオはうまくいっているように思える。 研究実績の2番目の研究は、我々の模型の拡張を模索したものである。これまでは1次元線分を余剰次元として考えてきた。それをさらに拡張した1次元余剰次元を考えるため、量子グラフを考察したものである。量子グラフは1次元空間としては最も広い枠組みと考えられる。我々の解析によって、量子グラフ上の余剰次元模型は、豊富な構造を保っていることが明らかになり、1次元余剰次元をもつ5次元模型の可能性を広げるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は、昨年度からの研究を引き続き進展させることである。具体的には、クォーク・レプトンを1世代のみ含む5次元余剰次元模型から出発して、カシミヤエネルギーの最小化を行い、世代数を出すとともにクォーク・レプトンの質量および世代間混合を再現できるかどうかを確かめることである。このとき、クォークは6種類、荷電レプトンは3種類存在する。全部で9個の質量を 実験値と理論値で比べることになる。そのときのパラメータは、5次元のクォーク・レプトンの場のバルク質量と、ヒッグス場の真空期待値に含まれるパラメータである。これらは、今のところ手で調整することによって、クォーク・レプトンの質量を合わせることになる。この解析は数値的に行う必要があり、すぐに結果が得られるというわけにはいかないが、計算手法も工夫しながら解析を進めていきたいと考えている。 その解析と同時並行に、余剰次元を1次元線分から量子グラフに拡張して、上で述べたことと同じ解析を行う予定である。量子グラフ上の余剰次元模型では、量子グラフのもつ多様性が使えるので、より現実的な模型の構築が可能になると期待している。この模型の1つの利点は、ヒッグス場の真空期待値が標準模型と同じように定数であっても、クォーク・レプトンの質量階層性が出せることである。また、もう1つの利点は、CP位相を自然と含むことである。これらの性質についても来年度は詳しく考察する予定である。また、量子グラフ上の余剰次元模型として、物理数学的に非常に面白い構造をもつことが明らかになりつつあるので、その点についても考察を進めたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
海外での国際会議での発表を予定していたが、大学での最優先の業務に予想以上に多くの時間を取られてしまったため、国際会議に参加することができなかった。そのため、予算が余ってしまった。次年度の使用計画として、国際会議の参加のための旅費補助と参加費に使用する予定である。また、研究目的遂行のためのノートパソコンの購入も予定している。
|
Research Products
(9 results)