2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the quark and lepton flavor structure by minimizing Casimir energy in extra dimensions
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18K03649
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 眞人 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 教寛 大分工業高等専門学校, 一般科理系, 准教授 (40732946)
竹永 和典 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (50379294)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 余剰次元 / 標準模型 / 世代数問題 / 量子グラフ / 指数定理 / ベリー位相 / モノポール / インスタントン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、標準模型における世代数問題を解決する余剰次元模型として、量子グラフを1次元余剰次元にもつ5次元余剰次元模型と一様磁場中の2次元オービフォールドを余剰次元にもつ6次元余剰次元模型における、カイラルゼロモードについて考察した。標準模型における世代数は、余剰次元模型におけるカイラルゼロモードの数に対応している。そこで、上記に挙げた余剰次元模型におけるカイラルゼロモードの数について、一般的な枠組みのもとで調べ上げることに成功した。この解析によって、クォーク・レプトンを3世代もつ量子グラフ上の余剰次元模型の完全なリストを得ることができた。ただし、この解析結果によると、クォーク・レプトンを3世代もつ模型は、当初想定していたよりもかなり広いパラメータ空間をもつことが明らかになった。また、量子グラフのもつ位相不変性の観点から、ベリー位相について詳しく調べた。その結果、量子グラフのパラメータ空間には、モノポールやインスタントンなどのトポロジカルな配位が、ベリー位相の接続として現れることが明らかになった。特に、インスタントン配位をベリー位相としてもつ模型は、これまでほとんど知られていなかったので、我々の結果は非常に興味あるものである。この成果については、論文として発表予定である。また、一様磁場中のオービフォールド模型に関しては、昨年度からの研究の継続で、カイラルゼロモードの数と渦度の対応関係を与える公式を明らかにした。この公式は我々が初めて与えたものである。また、この公式で磁場がない場合を、Atiyah-Singer指数定理として証明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題ではまず初めに、5 次元の余剰次元模型で我々のシナリオが上手く働くかどうかを確かめることであった。我々は点状相互作用をもつ5次元理論で、クォーク・レプトンを1世代ずつ含む模型を用意し、その模型に対してカシミヤエネルギーの最小化を行った。その結果、点状相互作用の位置が、全てのフェルミオンに対して等間隔で並ぶというのが、最適な配置であることがわかった。さらに解析を進めるために、ヒッグス場の真空期待値を厳密に解くことによって、真空期待値は一般的に余剰次元に依存し、指数関数的な振る舞いをもちうることがわかった。(実際に得られた解は楕円関数である。)この指数関数的な振る舞いはクォーク・レプトンの質量階層性を定性的に説明するので、我々のシナリオはうまくいっているように思える。その後、我々の模型を一般化するために、1次元余剰次元としてもっとも広いクラスを与える量子グラフを考察した。量子グラフ上の余剰次元模型に対して、量子グラフを指定するパラメータとカイラルゼロモードの数の関係を与える公式を導くことに成功した。それによって、我々が当初考えていた模型よりももっと広範囲な(クォーク・レプトンを3世代もつ)模型が存在することが明らかになった。これは大きな成果である。しかし、その模型を指定するパラメータの数が増えたため、以前行ったカシミアエネルギーの最小化の計算をそのまま行うことは難しい状況にある。また、今年度の研究で、クォーク・レプトンを3世代もつ模型として、一様磁場中のオービフォールド模型が新たに加わった。この模型に対して、カシミアエネルギーの最小化のシナリオがうまく働くかは今後の課題である。 ただし、コロナ禍で在宅勤務を余儀なくさせられたことで研究室のパソコンが使えないことが多く、数値計算の進行は遅れ気味である。この事情は分担者も同様である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は、今年度からの研究を引き続き進展させることである。まず初めに、3世代のクォーク・レプトンをもつ量子グラフ上の5次元余剰次元模型から出発して、クォーク・レプトンの質量および世代間混合を再現できるかどうかを確かめることである。このとき、 クォークは6種類、荷電レプトンは3種類存在するので、全部で9個の質量を実験値と理論値で比べることになる。そのときのパラメータは、5次元のクォーク・レプ トンの場のバルク質量と、ヒッグス場の真空期待値に含まれるパラメータ、そして新たに加わることになった量子グラフを指定するパラメータである。これらは、今のところ手で調整することによって、クォーク・レプトンの質量を合わせることになる。この解析は数値的に行う必要があり、すぐに結果が得られるというわけにはいかないが、計算手法も工夫しながら解析を進めていきたいと考えている。量子グラフのパラメータ空間はかなり大きいので、そのままカシミアエネルギーの最小化の解析に移るには問題がある。そこで、 その解析結果をみて、どのようなタイプの量子グラフが標準模型を再現するのに有望かを見極めることが必要である。標準模型を越えた理論として、有望と思われる量子グラフのタイプを特定(量子グラフのパラメータ空間を制限)した後で、カシミアエネルギーの最小化の解析を実行する予定である。量子グラフ上の余剰次元模型では、量子グラフのもつ多様性が使えるので、より現実的な模型の構築が可能になると期待している。この模型の1つの利点は、ヒッグス場の真空期待値が標準模型と同じように定数であっても、クォーク・レプトンの質量階層性が出せることである。また、もう1つの利点は、CP位相を自然と含むことである。これらの性質についても来年度は詳しく考察する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は全世界的に新型コロナの影響で、国際会議がオンライン開催となったため、海外渡航の旅費及び会議の参加費等の支出がなかった。 一方、コロナ禍で在宅勤務を余儀なくさせられたため、研究室のパソコンを思うように使うことができず、パソコンを使っての数値計算が予定通りに進まなかった。この状況は分担者も同じであった。次年度も今年度同様、在宅勤務を強いられることが多いと予想されるので、その対処として今年度の余った予算で自宅で数値計算が行えるようにパソコンとソフトを購入する予定である。
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Research Products
(14 results)