2019 Fiscal Year Research-status Report
分解反応精密解析による原子核存在限界近傍での新奇な共鳴状態の解明
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18K03650
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 琢磨 九州大学, 理学研究院, 助教 (60415304)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共鳴状態 / 分解過程 / 不安定原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
共鳴状態は量子多体系に現れる状態であり、特に原子核においては様々な共鳴状態が発見され注目されている。その中で2019年度は、不安定核領域に現れる2中性子ハロー核6Heの2番目の2+状態に着目し、その共鳴状態が実際に実験の観測量にどのように影響を与えるかを理論的に明らかにした。これまで2番目の2+状態については、理論的にも実験的に調べられているが、その存在についても未だ問題として残っており、今回の研究で2番目の2+が観測量としてどのように見えるかについてを初めて明らかにできた。こちらの成果は、現在論文としてまとめPhysical Review Cへ投稿中である。また6Heのクーロン分解反応にみられるE1共鳴についも実験との共同研究として進めており、こちらは現在論文を執筆中である。 また、共鳴状態と実験観測量であるエネルギー微分断面積の関係性について炭素12、および、ベリリウム11の原子核について調べた。この結果はこれまで知られていた共鳴状態がBreight-Wigner型の分布をするという認識を変えるものであり、これらの研究についても現在論文を執筆中である。 2019年度は、これまで研究を進めてきた11Liの新奇な共鳴状態についてまとめ、Progress of Theoretical and experimental Physicsに投稿し掲載された。また、同雑誌に連続状態への分解効果を取り入れた光学ポテンシャルの研究に関する論文も掲載された。さらに、多くの国内会議、国際会議について共同研究者とともに発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまでの成果としてまとめた論文が2件掲載された。また新たな研究として、実験的観測の難しい幅の広い共鳴状態である6Heの2番目の2+の研究に着手でき、現在その成果をまとめて投稿中であり、実験との共同研究も進行中である。 また、共鳴状態の本質的な研究も進めることができ、これらは学生の修士論文としてまとめるなど、幅広く研究を行うことができた。以上から、研究の進捗状況は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、原子核における共鳴状態とそれが実験的観測量に与える影響について理解が進んでおり、今後はより様々な系の共鳴状態について研究を進める。特に原子核だけでなく、同じ量子多体系の原子分子系、ハドロン系などに現れる共鳴状態にも注目し、普遍的な共鳴状態を理解していく。
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Causes of Carryover |
昨年度に購入予定であった計算機は研究スペースの確保が難しく、また、大学のネットワークシステムが2020年度から変更になるため2019年度の購入を見送った。こちらについては2020年度に購入予定である。また、コロナウィルスの影響により3月の研究会旅費が不要になりその分が少し余った。こちらについては2020年度の国際会議等に充てる予定だが、いくつかの会議が中止または延期になっており状況を見て判断する。
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