2019 Fiscal Year Research-status Report
軽いゲージ粒子をとおして探るニュートリノ質量と暗黒物質の起源
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18K03651
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
下村 崇 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (00447278)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 軽いゲージ粒子 / ニュートリノ質量と混合 / Atomkiアノマリー / フレーバー対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大枠の目的は、ニュートリノの質量と混合、および暗黒物質の起源としてのゲージ対称性の可能性を明らかにすることである。その目的の中で以下の3つの研究を行った。
1) フレーバー対称性としてのLμ-Lτ対称性を考え、ニュートリノ振動とミュー粒子の異常磁気能率を同時に説明しつつ、IceCubeによって報告されている宇宙ニュートリノのフラックスの減少を説明出来る模型を構築した。ミュー粒子の異常磁気能率と宇宙ニュートリノフラックスの減少を同時に説明することで、ニュートリノの質量生成機構に制限が課される。その制限を満たし得る最小の模型としてLinear seesaw機構とInverse seesaw機構を組み合わせた提案した。 2) フレーバー対称性の別の可能性としてモジュラー A4 対称性を考え、この対称性を持つtype-II seesaw模型を解析した。この模型では単純なゲージチャージの課し方では、対称性による制限がきついため実験結果を説明できないことを明らかにした。そのためゲージチャージの取り方を工夫することで最小に拡張した模型を考案し、それによってニュートリノ振動実験を矛盾なく説明できることを明らかにした。また、CPの破れの大きさやニュートリノ質量の絶対値、二重荷電スカラーの崩壊分岐比に対する予言を与えた。この論文は現在投稿中である。 3) Atomkiアノマリーを説明するため、標準模型にU(1)R対称性を貸した模型を構築した。この研究ではニュートリノ-電子散乱による非常に厳しい制限を逃れるためスカラーセクターを拡張した。新たなに導入したスカラーのゲージチャージを上手くとることで上記の制限を逃れることができ、さらに他の実験による制限も全て満たしつつAtomki実験を説明できることを明らかにした。この論文は現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたAtomki実験の結果を説明し得る模型の構築は完了した。一方でLHC実験またはニュートリノ三重生成過程を通した軽いゲージ粒子の検証は少し遅れているが、現在論文にまとめている最中であり概ね予定通りに進んでいる。遅れの理由はmodular対称性を持つ模型の解析を始めたからであるが、その成果は論文にまとめて投稿中である。以上より、全体を通して概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Atomki実験を説明し得る模型に関しては、今後は予定通りこの模型における予言と実験による検証を調べていく。また、AtomkiグループがHeでもアノマリーが出たと報告しており、すでに報告されているBeのアノマリーを同時に説明可能かどうかを調べていく。ニュートリノ三重生成過程に関する研究に関しては、今後はゲージ粒子とスカラー粒子の両方でそれらの質量と結合定数をどこまで決定または制限できるかを見ていく。
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Causes of Carryover |
昨年度末に国際研究会を開催する予定であったが、新型コロナウイルスによる渡航禁止等により中止とした。そのための旅費や運営費として考えていた金額が未使用のまま残った。また、同様の理由により3月に研究会に出席する予定であったがそれも中止としたため、その分の旅費が残った。
残った分は今年度の助成金と合わせて、国内及び海外出張の旅費に充てる予定である。
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