2018 Fiscal Year Research-status Report
黒様体法を用いた高次元ブラックホールの流体力学的解析
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18K03652
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮本 雲平 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (70386621)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高次元ブラックホール / 流体不安定性 / 一般相対論 / 流体・重力対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子統一理論やゲージ・重力対応の観点から、高次元ブラック・ホール研究の重要性が高まっている。なかでも、高次元ブラック・ホールの普遍的な不安定性であるグレゴリー・ラフラーメ不安定性について、「グレゴリー・ラフラーメ不安定性がどのような最終状態に落ち着くか?」という問いは当該分野の最重要問題である。そこで、本研究では、黒様体法や変分法といった手法を用いて、ブラック・ホールの運動方程式(Einstein方程式)を等価な流体系に落とし込み、ブラック・ストリングの静的・動的な安定性を包括的に考察していく。 初年度においては、ブラック・ストリングに対応する流体の静的安定性を明らかにするという課題に取り組んだ。具体的には、表面張力で支えられた流体の安定性という問題を微分幾何学における平均曲率一定面の安定性という変分問題に落とし込み、変分法・微分方程式論などを駆使して、安定性解析を行った。結果として、数値解析を援用しつつも、全ての次元・パラメータ領域で数学的に安定性・不安定性を分類することに成功した。それらの成果は現在執筆中の論文に収められ、近日中に投稿される予定である。 また、動的な不安定性に関する問題に対して、既存の流体解析の定式化をターゲットとする流体(相対論的圧縮性流体)に拡張する作業を行っており、成果が出始めている。さらに、高次元ブラックホール研究に相補的な役割を果たす4次元ブラックホールやワームホールに関する量子効果についても解析を進め、3本の査読付き原著論文として発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度解析を行った流体の安定性に関しては、黒様体法を通じたブラック・ストリングとの対応が完全であるとは言いがたいが、間違いなく本研究課題を進める上で有益な解析であると判断し、そちらを優先した。したがって、当初の研究計画にあった自己相似解の発見という課題は完了していないが、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、研究実績の概要で述べた変分法を用いた安定性解析に関する論文を完成させ、次のステップとして、ブラック・ストリング流体の自己相似解の発見に向け、圧縮性・相対論効果を順次取り入れ流体解析を進めていく。
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Research Products
(7 results)