2018 Fiscal Year Research-status Report
Cosmological Constant Problem and Scale Invariance
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18K03659
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
九後 太一 京都産業大学, 理学部, 教授 (00115833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙定数問題 / スケール不変性 / 自発的対称性の破れ / Higgs場 / 南部--Jona-Lasinio模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.今年度は、先ず、本科研費の出発当初までに得られた本研究課題の宇宙定数問題に対する研究代表者の問題の捉え方、問題解決に向けての研究の方向性、などの基本的考え方をまとめ、京都産業大学の紀要「総合学術研究所所報13号」に発表した。 2.次に、この紀要論文に記述の捉え方から発展させて、「古典論の段階でのスケール不変性、すなわち理論が全く次元を持つパラメータを含まないこと、が、宇宙定数問題の解決(説明可能性)のための必要条件である」ことを明らかにした。 3.その後、実施計画の二つの可能性のうちの後者の方の「量子スケール不変くり込み」で宇宙定数問題が解決出来るかを、簡単な(dilaton場とHiggs場の)2スカラー場模型で1-loop計算を詳細に検討した。その結果、量子スケール不変性は、古典的スケール不変性と同じく、量子補正がポテンシャルの平坦方向の平坦性を保つ役割を果たさない、ことが明らかとなった。すなわち、平坦性を保つことは、理論の結合定数のくり込み条件として課すことが出来るが、それは結合定数の56桁もの超微細調整が必要だということを意味しており、それは初めからの宇宙定数問題そのものであって、量子スケール不変性だけでは、宇宙定数問題は未だ解決できない、ということである。これは否定的結果であるが、重要な認識である。 4.この宇宙定数問題と今後関係するダイナミカルな対称性の破れについて、SU(N)対称性を持つ南部--Jona-Lasinio模型をフェルミオンが定義表現や2階反対称表現の場合を調べ、対称性が自発的に破れる場合は、ほとんど全ての場合に、SO(N)やUSp(N)などの特殊部分群に破れる、ことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初の研究計画では、そもそも二つの可能性を考え、それぞれの可能性に対応する二通りの立場からのアプローチを計画していた。一つは「スケール不変性自体は量子アノマリーにより壊れている」とする通常の立場であり、もう一つは、量子論的にもスケール不変性を保つ新しい「量子スケール不変くり込み」を使う立場である。前者の場合でも、私は「確定した赤外固定点が存在すれば、ポテンシャルの停留点の値がゼロという性質はアノマリーで壊されない」ことを証明した。しかし、この場合のダイナミクスの解析が難しく、今年度はこの方向での進展がほとんど得られなかった。このため、上の区分では(3)と評価したが、しかし一方、上述の実績概要で述べたように、スケール不変性が必要条件であることの証明や、量子スケール不変くり込みに基づくアプローチで、量子スケール不変性が量子補正に対しポテンシャルの平坦性を保つ役割を果たさない、ことを明らかにして認識を深めることは出来た。 そのため、今や、量子スケール不変なアプローチでも、通常のスケールアノマリーがあるというアプローチでも、対称性の自発的破れのダイナミクスの解析が必要である事がわかった。これに関連して、連携協力者とダイナミカルな対称性の破れを南部--Jona-Lasinio模型で調べ、対称性はregular部分群へよりも特殊部分群へ破れることの方が多いことを明らかにした。これらの成果を考慮すれば、(2)おおむね順調とも言えるかもしれないが、2018年度中に査読つき雑誌に論文を投稿出来ていないので(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況でも述べたように、今や、量子スケール不変なアプローチでも、通常のスケールアノマリーがあるというアプローチでも、対称性の自発的破れのダイナミクスの解析が必要である事がわかったので、今後は、ダイナミカルな対称性の破れの研究をより着実に進める。すなわち、先ずは、簡単な南部--Jona-Lasinio(NJL)模型を用いて解析したいが、この模型は結合定数が次元を持ち、古典的スケール不変性をも持たない。しかし、量子スケール不変くり込みの方法で、NJL模型をスケール不変な形の模型に変えて定式化することとし、その上で、ダイナミクスを解析する。さらに、それと並行して、初めからスケール不変なゲージ理論で、東島-Miransky近似のSchwinger-Dyson, Bethe-Salpeter方程式での解析と比較検討しながら、そう簡単ではない対称性の自発的破れのダイナミクスの解明に向かう。 これまでの連携協力者以外とも広く研究議論をし、必要なら新しい研究協力者とも共同研究をする。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた国際会議での発表を、研究進捗の若干の遅れやスケジュールの都合で取りやめたので、それを次年度に回したい。また、北海道に居た連携研究者が、この3月から京都大学の科研費雇いの研究員になったので、予定していた九州大学への物理学会参加旅費支援が不要になった。 次年度はヨーロッパで開催の国際会議に出席するための旅費と、国内の共同研究をする研究者の招聘や、研究課題関連の研究者を講師として招聘したりするための旅費・謝金などを増やして使う。
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Research Products
(5 results)