2018 Fiscal Year Research-status Report
Search for neutrino-less quadruple beta decay and electron capture with liquid xenon detector
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18K03669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市村 晃一 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (80600064)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、本研究での探索目標であり、ニュートリノがディラック粒子の場合にでも起こると言われているキセノン136の4重ベータ崩壊、キセノン124の4重電子捕獲事象のうち、Q値が79 keVと小さいキセノン136の4重ベータ崩壊事象を探索した。過去にXMASSで発表された論文と同じ、800日分のデータを用い、同様にすでに発表された論文で使用した検出器の放射性不純物由来のバックグラウンドシミュレーションを用い、信号を探索した。 検出器の状態に応じて4つの期間にデータを分け、また、波形弁別手法を用いることで、4重ベータ崩壊の信号を多く含むサンプル、炭素14やアルゴン39等のベータ崩壊するバックグラウンドを多く含むサンプル、ラドン222の娘核であるビスマス214を遅延同時計測で集めたサンプルの3つのサンプルを使い、エネルギースペクトルをフィッティングすることで信号を探索した。結果、有意な信号は見つからなかったものの、90%信頼度での半減期の下限値(3.8 x 10の24乗年)という、初の実験的制限を得た。この結果について日本物理学会第74回年次大会で報告し、現在論文を執筆中である。
Q値が573 keVのキセノン124の4重電子捕獲事象探索に向けた解析も進めている。XMASSで取られた約1600日のデータの位置再構成を全ての事象で終わらせており、また、シミュレーションについてもこれまでエネルギーの上限が300 keVだったのを、上限を無くしたシミュレーションを作り始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、キセノン136の4重ベータ崩壊事象を探索した。過去にXMASSで発表された論文と同じ、800日分のデータを用い、同様にすでに発表された論文で使用した検出器の放射性不純物由来のバックグラウンドシミュレーションを用い、信号を探索した結果、有意な信号は見つからなかったものの、90%信頼度での半減期の下限値(3.8 x 10の24乗年)という、初の実験的制限を得ることが出来、この結果を日本物理学会第74回年次大会で報告し、論文の執筆に取り掛かることが出来た。 また、Q値が573 keVのキセノン124の4重電子捕獲事象探索に向けた解析も進めている。XMASSで取られた約1600日のデータの位置再構成を全ての事象で終わらせており、また、シミュレーションについてもこれまでエネルギーの上限が300 keVだったのを、上限を無くしたシミュレーションを作り始めている。課題として考えていたエネルギースケールの系統誤差の評価手法についても、セシウム137の662 keVガンマ線源を検出器内に導入した較正データがあり、その較正データを用いることで評価可能であることが分かった。シミュレーションに用いる予定の東京大学のoakforestスーパーコンピュータについても、シミュレーションや解析ツールのセットアップを完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、キセノン136の4重ベータ崩壊事象探索結果について論文を投稿するのと平行して、Q値が573 keVのキセノン124の4重電子捕獲事象探索を進める。東京大学のoakforestスーパーコンピュータを用い、XMASS実験で取得した約1600日分のデータに相当するバックグラウンド事象シミュレーションを作成する。XMASS実験でこれまで探索されていない300 keV以上のエネルギー領域を探索するため、位置再構成情報を用いたカットや、液体キセノンの発光時定数情報を用いたカットの最適化を行い、データとシミュレーションの分布の違いを用いて系統誤差を評価する。エネルギースケールに関してコバルト57の122 keV、セシウム137の662 keV ガンマ線源を用いたデータとシミュレーションの違いを用いて評価する。 今年度後半を目処にバックグラウンドシミュレーション生成を終え、キセノン136の4重ベータ崩壊事象探索と同様にエネルギースペクトルのフィッティングを行い、キセノン124の4重電子捕獲事象探索を行う。エネルギースペクトルの中に予期せぬピークを見つけた場合はその原因を追求する。
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Causes of Carryover |
東京大学oakforestスーパーコンピュータを使用するための費用を想定していたが、XMASS実験のデータ取得終了に伴う作業や、スーパーカミオカンデ検出器の改修作業等に時間がかかり、予定よりも短い時間と短いノード数になってしまったため次年度使用額が生じた。 使用計画についてはキセノン136のニュートリノの出ない4重ベータ崩壊の論文の英語校正費、論文投稿費、国際会議発表費、およびキセノン124のニュートリノの出ない4重電子捕獲事象探索のためのスーパーコンピュータ使用費と、データ保存用磁気ディスク購入費として用いる。
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