2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03671
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
苔山 圭以子 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00753617)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重力波 / detchar / characterization / 干渉計診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年2月に、重力波検出器KAGRAの2週間の単独観測が行われた。2019 年度はこの観測に向けて引き続き検出器の状態を判別するためのモニタツールである Summary Pages の開発を行った。LIGOの開発チームの協力でいくつかの技術的なアップグレードを行い、さらにこれまで整備されていなかったサブシステムのページや、検出器の感度を表示するページを追加し、重力波検出器の大部分がモニターできるようになった。また、グリッチ探索ツール (Omicron) のほかに、周波数が一定で定常的に存在するラインノイズを特定するツール (Fscan)、重力波チャンネルと相関のある補助チャンネルを階層的に探すツール (hveto) の解析結果が簡単に閲覧できるページが 追加された。さらに、Summary Pages は、LIGO-VIRGOとの共同観測に向けて、LIGO, VIRGO, KAGRA (LVK) の公式な干渉計診断ツールとして指定され、Web上でLIGO-VIRGOコラボレータにも公開した。
干渉計の稼働状況を示すデータクオリティフラッグは、干渉計の稼働状況を判別し情報を提供するための、オンライン (リアルタイム) チャンネルである。2月の観測では、データ取得に問題がなかったどうかなどのいくつかのフラッグをまとめて、干渉計の状態を示すデータクオリティベクターとして重力波探査データ解析のために提供した。今後はさらにより多くのデータクオリティ情報を提供できるように開発を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年9月に、 LIGO SummaryPages 開発グループのメンバーである、Dr. Alex Urban と Mr. Sid Soni を招聘し、SummaryPages のアップグレードを行なった。SummaryPages 用計算機環境のアップグレードや、プロセスが正しく進んでいるかをモニターできる機能が加わった。さらに、データアクセスの問題を解決するためにデータの取得先をより安定な計算機から取得できるように変更した。その後、SummaryPages は安定に動作しており、2020年2月に行われた観測でも検出器の状態がモニターでき、さらにその情報をLIGO-VIRGOグループとシェアするためのツールとして使用することができた。
また、この観測において、検出器の稼働状態を示す検出器ステートベクター (data quality state vector) を生成した。この情報はデータを解析して重力波信号を探索する際に必要となる。今回、検出器ステートベクターは、(1) 検出器そのものがかどうしていたかどうか (2) 稼働のためのさまざまなパラメタがノミナルと同じかどうか (3)データが Analog-to-digital 変換(ADC) されて取得される時に、ADCのレンジを外れていないかどうか (4) 外部からの信号注入がなかったか、を判別する。すべての条件を満たしている場合には、データの質が重力波探索に使用可能であることを示す「サイエンスモード 」として判別される。さらに何時から何時まで (GPS時) がサイエンスモードであったかを示す、セグメント情報もデータ解析のために提供した。
上記の多くの研究開発をサポートしてくれた2名の研究者に研究分担者となっていただくことを了承してもらい、2020年度5月より研究協力者として登録した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年2月のKAGRA単独観測の後、2020年4月には、KAGRAと、ドイツの重力波検出器GEOとの共同観測が二週間行われた。まずは、この共同観測期間の干渉計がどのように稼働していたかをオフラインで診断を行う。干渉計の稼働状況に加え、稼働中のデータにグリッチ (突発的なノイズ) やラインノイズがあったかどうかを調べ、それらがノイズ起源であると判別したものは、データから取り除く。このような情報を干渉計の稼働情報をデータ解析グループへ提供し、重力波探索の効率を向上させる。
次回の観測では、干渉計の光学構成が変わり、さらにミラーを低温に冷却することが見込まれており、検出器の複雑さが増す。それに従い、引き続きSummaryPages のモニターページの追加と、検出器ステートベクターの更新を行う。また、グリッチやラインノイズを特定するツールが自動で走り、結果が SummaryPages へ反映されるようにソフトや計算機の調整を引き続き行う。まずは、特定されたラインノイズをデータベース化するためのツールを、欧州のプロジェクトVIRGOと協力して導入する予定である。また、セグメント情報が、自動で共同観測コラボレータとシェアできるように整備を行う。
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Causes of Carryover |
物品に関して、当該年度は予想よりもソフトウェアの開発が中心になったため、当該年度のセンサー、計算機類の物品購入を見送った。また、当該予算で招聘を予定していたLIGOの研究者が、先方の旅費できてもらえることになったため、旅費の支払いが生じなかった。
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