2018 Fiscal Year Research-status Report
アイソスピン増加型荷電交換反応を用いた中性子過剰核の研究
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18K03672
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
近藤 洋介 東京工業大学, 理学院, 助教 (00455346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子過剰核 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素・フッ素同位体では中性子ドリップラインが急激に変化する酸素ドリップライン異常という現象が知られているが、なぜ急激に変化するのかその起源は明らかになっていない。本研究では、アイソスピン増加型の荷電交換反応を用いることによって、これまで生成が困難であった酸素ドリップライン異常領域の中性子過剰核、特に非束縛核27Oの励起状態の観測を目指す。アイソスピン増加型の荷電交換反応の実験例はほとんどないため、27Oの励起状態測定の実験を検討するうえで収量の見積もりが難しい。そこで炭素標的を用いた実験のデータ解析を行い、アイソスピン増加型荷電交換反応における断面積の評価を行った。この実験は理研RIBFで供給される入射エネルギー200MeV/u~260MeV/uのナトリウム、ネオン、フッ素同位体の不安定核ビームを炭素標的に入射させ、反応後の荷電粒子・中性子をSAMURAIスペクトロメーターで同時検出したものである。このうち、28Neの反応で放出される27Fと中性子の運動量ベクトルから非束縛核28Fの不変質量スペクトルを導出したところ、これまで知られていなかった共鳴状態を同定することに成功した。28Fは統計量の少ない実験が1例あるだけであり、本研究の結果は酸素ドリップライン異常領域での殻構造の変化を知る手がかりになると考えられる。また陽子剥離反応を用いた27O、28Oの質量測定実験のデータ解析がほぼ完了し、27O、28Oの基底状態の候補となる共鳴状態をそれぞれ同定することに成功した。これらは世界初の観測となる。また、このデータ解析で多中性子検出の場合に問題となるクロストークバックグラウンドの除去方法を発展させた。これにより、4中性子の同時検出に対して従来の2倍程度の検出効率を得ることに成功した。以上の結果は、国内・国際学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素標的におけるアイソスピン増加型荷電交換反応により、28Fの共鳴状態を生成できることが確認できた。これはこの反応がより中性子過剰度の高い不安定核の生成に有用であることを示している。(7Li,7Be)反応でガンマ線を同時検出することにより、バックグラウンドを低減することができると考えられる。フランスLPCのグループと共同で進めている中性子検出器NEBULAのアップグレードも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素標的を用いた28Neのアイソスピン増加型荷電交換反応により、28Fの共鳴状態を同定することができたので、他の原子核の同反応チャネルを調べてみることは大変興味深い。また27Oの例状態測定実験の収量を見積もる上でも重要である。また、この酸素27の測定のためには中性子検出器NEBULAのアップグレードが必要不可欠である。フランスLPCグループと協力し、NEBULAのアップグレードをさらに進める。ただし27Oが26Oの基底状態を経由して崩壊する場合、2中性子はほとんど同方向・同速度で放出されるため、現存の中性子検出器NEBULAでは検出効率が十分高くない。東工大で開発中の高精細中性子検出器HIMEを使用することで検出効率を向上できる可能性がある。シミュレーションを進め、実験セットアップの最適化を行う。
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Causes of Carryover |
酸素27Oの励起状態の測定実験の収量見積もりのため、炭素標的を用いた実験のデータ解析と陽子剥離反応を用いた27Oの基底状態観測実験のデータ解析を重点的にすすめ、その成果報告のための学会参加に予算を集中させた。出張旅費が予定より少なかったため次年度使用額が生じた。次年度では得られた結果を活かし、27O実験条件の検討・最適化を行い、実験に必要となる物品等の購入を行う。
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