2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代大型検出器のための液体キセノンシンチレータ内の光散乱過程の研究
Project/Area Number |
18K03673
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 正吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50212098)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液体キセノン / シンチレータ / 光散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新たな散乱長測定実験を行なって液体キセノン中の真空紫外光の散乱強度の波長依存性を調べ,理論と比較することを通じて光散乱過程の詳細を明らかにする。実験では,外部光源を工夫して細い真空紫外光のビームを生成して液体キセノン中に入射し,前方において散乱光と減衰した一次光の両方を強度分布も含めて測光することによって散乱強度を評価する。 2年目である今年度は,散乱光と減衰した一次光を測定する測光系の研究開発と,外部光源により光ビームを生成する系の開発を共にさらに推し進めた。 測光系については,その最適化を進め,蛍光板として蛍光粉末をガラス基板に塗布する案から,基板自身が蛍光を発する透明な蛍光結晶を用いる案へと変更した。これにより,強い一次光による蛍光の蛍光板自身での散乱を抑制出来,周囲への滲みを減らすことが出来ると見込まれる。具体的な蛍光結晶には,以前に導入したGAGG結晶を用いることとした。 蛍光板の変更により,観察すべき蛍光が当初の予定よりも微弱になったことから,その測定には当初の計画よりも長い時間を要することが想定された。そこで,長時間露出にも耐える超低ノイズのカメラの導入を考え,様々な冷却カメラを比較検討した結果,-75℃まで冷却可能な既存のCCDカメラ(PIXIS256E)を流用することとした。このカメラに民生品のレンズを装着することで長時間露出での高感度イメージングを実現するべく,必要なレンズアダプタを設計して製作した。 外部光源については,真空紫外光の強度と指向性を共に高める方策を検討し,新たな光源としてフッ化マグネシウム窓のキセノンフラッシュランプを導入した。また,波長選択を行なう分光器の下流の光学系にフッ化マグネシウム製の集光レンズとコリメータを追加し,初期の性能試験を実施して,実際に直径約1mmの細い光ビームが計画通りに生成出来ることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用する開発中の実験装置の核心部は,細い光ビームを発する外部光源と,真空紫外光の散乱光と減衰した一次光の強度分布を決定する測光系の2つである。その前者の外部光源は,初期の設計を改良した光学系を実際に製作して必要とされる基本性能を試験で確認出来た。また後者の測光系も,計画変更して導入された蛍光結晶と高感度で実績のある冷却CCDカメラを導入して試験を実施出来たことなどから,概ね予定通りに進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
低ノイズな冷却CCDカメラを導入し長時間露出による高感度な測光が可能になった結果,測光系の高度な迷光対策が必要になると考えられる。このため,Geant4による光学系の計算シミュレーションを推し進め,効率的な遮光板の配置による最適化された測光系を実現することが,実測を開始するまでに必要である。
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Causes of Carryover |
蛍光結晶の発光を測定するために導入した高感度冷却CCDカメラの配置が,光学系の設計変更により真空チェンバの外部に置かれることになったので,真空チェンバの前面にビューポートを取り付けることになり,その設計と製作が年度をまたぐこととなったため。
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