2022 Fiscal Year Research-status Report
次世代大型検出器のための液体キセノンシンチレータ内の光散乱過程の研究
Project/Area Number |
18K03673
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 正吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50212098)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液体キセノン / シンチレータ / 光散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新たな散乱長測定実験を行なって液体キセノン中の真空紫外光の散乱強度の波長依存性を調べ,理論と比較することを通じて光散乱過程の詳細を明らかにする。実験では,外部光源を工夫して細い真空紫外光のビームを生成して液体キセノン中に入射し,前方において散乱光と減衰した一次光の両方を強度分布も含めて測光することによって散乱強度を評価する。 5年目である今年度は,早期に液体キセノンを実際に調製して細い真空紫外光のビームを通す測定に着手する計画を変更し,最初に,前年度末に発生した冷却系の温度制御用ヒーターの断線への年度を跨いだ対応と,本年度初めに発生した冷凍機のヘリウムガス漏れ事故の対応とを行なった。 断線したヒーターについては,液体キセノンに溶け込み汚染する物質成分を含まない従来のポリイミドヒーターが既に入手出来なくなっていたため,代替の別の種類のヒーターを検討し,最終的に民生品の小型の窒化アルミヒーターを用いることとした。そして,コールドブロックを変更することで,実際に安定に温度調整が可能であることを確認した。冷凍機のヘリウムガス漏れについては,ヘリウムガスが世界的な供給不足により購入出来なかったので,最終的に他の研究者からヘリウムを分けて貰って補充し,最終的に液体キセノンを調製する装置を復旧した。 その他,外部光源の波長制御用に用いる予定の真空紫外分光器について,重水素光源とキセノンフラッシュ光源を用いたVUV-UV領域での波長較正手法を確立し,0.1 nmという十分な精度で波長を制御出来るようになった。 上記のヒーターの断線とその後の対応については日本物理学会2022年秋季大会の赤外発光の測定に関する研究発表の一部として報告し,VUV-UV領域での波長較正については,日本物理学会2023年春季大会の赤外発光の測定に関する研究発表の一部として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症の第7波と第8波により研究に十分な人員を当てられなかったことに加え,液体キセノンを調製する装置で前年度末に発生した冷却系の温度制御用ヒーターの断線への対応で,代替部品の検討と調達においてコロナ禍の影響を受けた物流の混乱により時間が掛かった。また,本年度初めに冷凍機のヘリウムガス漏れ事故が発生し,世界的なヘリウムガスの供給不足により補充のためのヘリウムガスの入手に時間が掛かるなど,装置の復旧に多くの時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
液体キセノンを調製する系が復旧したため,新年度の初頭のなるべく早くに,実際に液体キセノンを用いて最終データを取得する実験を行う。
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Causes of Carryover |
年度末までにデータ取得に至らなかったため,データ取得時に必要な消耗品費が次年度に繰り越された。
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