2018 Fiscal Year Research-status Report
インフレーション探索に用いる低温駆動系のための低発熱モーターの開発
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18K03677
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
魚住 聖 岡山大学, 自然科学研究科, 特別契約職員(助教) (00422189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 知岳 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (70625003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフレーション理論 / 宇宙背景放射 / Bモード偏光測定 / LiteBIRD計画 / 超低温用モーター開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
テスト本研究の究極的な目的は、宇宙背景放射(CMB) のBモード偏光を人工衛星で測定し、Δr<0.001 の精度でインフレーション理論の検証を行うことである。本研究では、その測定でのノイズ低減に必要不可欠な半波長板を4K程度の超低温で回転させるモーターの開発を行っている。 回転半波長板はロックインアンプと同じ原理で信号を変調し、後で復調操作を行うことによって、望遠鏡・検出器を含む観測装置由来の低周波数成分ノイズ(1/f ノイズ) を非常に効率よく低減することができる。これを4K の極低温で、人工衛星に搭載してモーターで駆動する事はこれまで前例がない。特に低温下で非常に発熱の少ない動作をするモーターは、いくつかの技術的問題から未だ世界に存在しないが、衛星によるCMB偏光測定のためにはそれが不可欠である。 本研究では独創的な方法により、このモーターを制作し、実際の使用状況に近い低温環境で動作の実証を行うものである。 具体的なこれまでの研究実績の概要として、まずモーターの発熱を極限まで抑える銅線材の開発に目処が付いた。コイル銅線のジュール発熱量はResid-ual Resistance Ratio (RRR=線材の4Kと273Kでの抵抗率の比)に反比例する。我々はRRR>1000を目標としているが、線材単体では、既にRRR>2000を達成している。また、RRRは金属を加工した際の残留応力により低減するが、終形状に加工した後に>摂氏500度程度でアニーリングし、残留応力を除去することで高いRRRを持つ線材をモーターに使用することを目指している。アニーリングの研究についてはについては現在中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、一つの大きな課題であった高RRRの線材開発については既に目処がついた。 現在は、この線材をステッピングモーターに組み込み、アニーリングを施してモーターを動作させ、我々の要求を満たす動作条件(高いTechnical readiness levelの達成、超低発熱性等)に進んでいる状況である。 幸いこれまでの線材開発は、これまでの線材開発メーカーとの折衝などにより、比較的低予算で開発を進めることができた。 これをモーター線材として使用し、アニーリングの上正しく動作するモーターにしなくてはならないが、これはモーター開発会社との連携が必須であり、また比較的多額の予算を必要とする。 現在、当該モーター開発会社から、衛星でも使用できるが低温対応でないモーターを購入し、その動作確立と、既に開発した高RRR線材を用いた低温仕様モーターへの改造に関する開発研究を行っている。未だ開発要素は多く残っており、まだ学会発表や論文執筆には至っていないが、今後できる限り研究成果の発信を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の目下の研究の推進方策と目標として、まず既に得られた高RRR線材を用いて、当該モーター開発会社から販売されているステッピングモーターの線材を巻きかえ、アニーリングを行い、その動作を確認する事が重要である。 おそらくこれらの一連の研究は一度では成功しないと思われるため、複数回の試行とフィードバックが必要になると思われる。 更に、現在行っているモーター開発会社にどこまでの作業を委託するかの検討や、それに伴う予算執行計画も柔軟に行わなければならない。 何回かの試行それぞれで作られた超低温用モーターの動作テストは、Kavli IPMUにあるクライオスタットを用いるが、その中での動作を確認するため、岡山大とKavli IPMUで共同テストを行う。更に、超低温モーターが使用される回転半波長板の小型プロトタイプを用いて、回転位置測定のLED,光センサー、回転エンコーダを用いた、実際の動作環境に近いテストも行う。
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Causes of Carryover |
昨年度は、既にある導線線材と被覆材を使って、高RRRを実現する線材を低予算で開発することができた。しかし本年度は、その線材を現在共同で研究開発を行っているモーター開発会社と、開発済み線材を利用した超低温モーターの開発をシェアする予定であり、当該モーター開発会社にどれほど作業を委託するかはまだ議論の途中であるが、少なくとも100万円程度の開発費の提供が必要ではないか、と見積もられている。 昨年度使用しなかった分の予算を、まずはここに充てる予定である。 また、追加で線材などが必要となった場合の購入費用も必要となるので、昨年度未使用分を充てることになる。
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