2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03679
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
藤村 寿子 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90378589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 誠司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70222289)
田中 正義 神戸常盤大学, 保健科学部, その他 (70071397)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PHIP / 超偏極 / 19F |
Outline of Annual Research Achievements |
パラ水素誘導偏極法(PHIP法)とは,水素化反応によって化合物中の2重結合または3重結合に触媒存在下でパラ水素(構成する2個の水素原子核1Hのスピンが互いに逆向きになった水素分子)を付加し,化合物の電子を仲立ちとして1Hの偏極を化合物中の原子核に移して超偏極化合物を生成する手法である.本研究では19F原子核を含む化合物に着目し,PHIP法を用いて超偏極19F化合物を生成する技術の確立を目指しており,将来的にはMRIの造影剤として利用し,MRIの感度を大きく向上させることを念頭においている. PHIP法の水素化反応中に外部磁場を与えると,19Fの偏極度に影響を与えることが分かっている.外部磁場の環境には大別して2種類があり,水素化反応からすべてをNMR装置の磁場中で行うPASADENA方式と,水素化反応は地磁気下で行い,磁場を断熱的に変化させて偏極移行を行った後にNMR装置に入れるALTADENA方式がある.臨床応用を踏まえると,MRI装置のそばで超偏極19F化合物を生成するのに有効な手段であるALTADENA方式が望ましい.本研究では,ALTADENA方式のための磁場制御システムを構築し,効率的に1Hから19Fに偏極を移すためのパラメータを探索する. 水素化反応に用いる19F化合物と触媒については,当初,19F化合物として2重結合を持つ,3,4,4,5,5,6,6,6-nonafluoro-1-hexene,触媒としてWilkinson触媒を用いて研究を行ってきたが,水素化反応の進行が遅く,PHIP法には適さないことが分かった.このため,今年度は,水素化反応が速やかに進むような19F化合物と触媒の選定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ALTADENA方式のための磁場制御システムを構築し,効率的に1Hから19Fに偏極を移すためのパラメータを探索するときには,PHIP法に最適な19F化合物と最適な触媒を用いた水素化反応で行う必要がある.当初,19F化合物として2重結合を持つ 3,4,4,5,5,6,6,6-nonafluoro-1-hexene(以下ではnonafluoro-1-hexeneと記す),触媒としてWilkinson触媒を用いて研究を行ってきたが,実際に水素化反応の実験を行ってみると進行が非常に遅く,数時間かかることが分かった.水素化反応に時間を要すると偏極が緩和するため,実験状況を変えて試行錯誤したが,劇的な変化はなく,nonafluoro-1-hexeneとWilkinson触媒では上手くいかないという結論に至った.このため,今年度は水素化反応が速やかに進むような19F化合物と触媒の選定に費やした.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き,PHIP法の水素化反応が速やかに進むような19F化合物と触媒の選定を進める.その後,ALTADENA方式のための磁場制御システムの構築を行う.
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Causes of Carryover |
理由:ALTADENA方式のための磁場制御システムの構築を行う予定だったが,計画当初に予定していた19F化合物とWilkinson触媒では反応が遅く,PHIP法の水素化反応には適さないという判断に至った.このため,磁場制御システムの構築を延期し,今年度は19F化合物と触媒の選定を行ったため,磁場制御システムの構築の費用に相当する次年度使用額が生じた.
使用計画:当初の計画通りにALTADENA方式のための磁場制御システムの設計と製作のための費用とする.
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