2019 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ原子核反応の理解にむけた大型液体アルゴンTPC測定器の開発研究
Project/Area Number |
18K03684
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
坂下 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50435616)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 液体アルゴンTPC / ニュートリノ原子核相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノ-原子核反応の詳細測定にむけて3次元イメージング測定器「液体アルゴンタイムプロジェクションチェンバー (液体アルゴンTPC)」の大型化を目指している。高い信号-雑音比を維持できるように測定器上部のガス領域で増幅装置を用いて信号を増幅して読み出す気液2相式方法の開発を進めている。 小型液体アルゴンTPCに10cm x 10cmのガス増幅器(GEM)およびストリップ読み出しを組み込んで、宇宙線による性能評価を行った。2019年度は、この性能評価試験で分かってきた2つの課題に取り組んだ。 1つは、信号増幅率の時間変化について理解を進めた。信号増幅率が数日の減衰時間で減少する様子が確認された。追試験や宇宙線データの考察、国内外のGEM専門家との議論から、GEM基板のチャージアップが原因と考えられる。参加している国際共同実験で評価を進めている同じ基板構成の50cm x 50cm GEM基板でも同様な傾向がみられた。今後はTPC容器にガスアルゴンだけ充填したセットアップでの測定などを進めて、現在のGEM基板の増幅率の時間変化の系統的な理解を進める。また、大きい基板では放電現象もみられている。これらの現象の理解とともに放電を抑えながらかつ増幅率の時間変化を小さくするGEM基板の検討も進めていきたい。 2つ目の問題は、増幅率をさらに大きくしようとすると、読み出し信号量が飽和する問題である。この問題解決のために、使用した特定用途向け集積回路(ASIC)で出力信号が飽和しない領域(ダイナミックレンジ)を広げるように動作条件の最適化を行った。回路シミュレーションに基づいて外部電源等で変更できるパラメーターの最適化を進めたが、現行のASICでは信号飽和の回避が困難であることが分かった。大型検出器の実現にむけては広いダイナミックレンジが取れる開発中の新しいASICの評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
要素技術開発では、大型化にむけてGEM増幅率の時間変化や大型化したときの放電現象の理解と対策が必要になった。そのため当初の計画より開発の進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
大型液体アルゴンTPC測定器の実現にむけた要素技術開発では、GEM基板の問題点について、ガスTPCを用いた追試験を進めつつ、放電を抑えながらかつ増幅率の時間変化を小さくするGEM基板の検討を国内外の専門家とも議論して進める。具体的な案としては、高抵抗材質を用いたGEM基板等の検討をしていく。 要素技術開発と平行して開発しているモンテカルロシミュレーションを用いた研究も進め、これまでの技術開発で得た知見も考慮してニュートリノ-原子核反応測定実験の実現性評価を行う。
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Causes of Carryover |
気液2相式読み出しの性能評価試験で判明したGEM基板の増幅率の減少や放電現象について対策が必要になった。対策の具体案の検討に時間が必要になったために物品費の一部を次年度へ繰り越すことにした。 このGEM基板の問題点について、2020年度には現象を系統的に理解するための追試験を進めつつ、放電を抑えながらかつ増幅率の時間変化を小さくする新しいGEM基板の検討を進める。1つの可能性として高抵抗材質を用いたGEM基板等の検討を行う。要素技術開発と平行して、ニュートリノ-原子核反応測定実験の実現性評価を行う。
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Research Products
(1 results)