2019 Fiscal Year Research-status Report
新しい物理素過程を利用した荷電レプトンフレーバーの破れの探索
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18K03685
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
津野 総司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30451834)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒッグス粒子 / タウレプトン / アトラス実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、欧州原子核研究機構CERNにて、LHC-ATLAS実験に於けるピクセル検出器の運転に従事し、また、タウレプトンがハドロンへ崩壊するモードを同定するグループ のリーダーを務めた。一方で理論計算は当初の予定よりも遅れていた。当該年度はこれらの知見をより深化させた。 ピクセル検出器は、放射線損傷による電荷収集効率の劣化が著しく、適切な補正を行わなければ、物理解析データに深刻な影響を及ぼす。そのため、放射線量の大きさに応じて、電荷収集効率を測定し、この結果を検出器シミュレーションへ反映させた。さらに、ピクセル検出器の情報をタウ粒子同定アルゴリズムに組み込む手法を考案し、およそ5%の改善が示せた。こういった改善を今後のデータ解析へ生かしていく。 当該研究課題であるレプトンフレーバー(LFV)を破る物理素過程に関しては、現地研究者と議論し認知を深めた。正式にこの解析が進められるようになり、必要となるデータ解析に必要なシミュレーション等のリソースを準備している。理論研究者との共同で行っている理論計算に関しては、前年度は、近似計算に頼っていたが、当該年度は、厳密な摂動計算を行った。標準理論を拡張した超対称性理論に基づき、ヒッグス粒子2重項から予言される荷電ヒッグス粒子が、LFVを引き起こす物理素過程を計算し、実際のLHC実験に於ける衝突データでの評価を行うため、簡易検出器シミュレーションによって感度を見積もった。結果を日本物理学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の遅れは取り戻したが、依然、理論計算が遅れている。当該年度の進捗は、高次補正による取り込めていない発散項を相殺することに成功したことである。摂動計算のゴールは見えてきたが、この計算結果を実際のアトラス検出器シミュレーションに実装して、物理解析を行わなければならない。理論計算の完成度をどこに設定するかによって、今後の理論による補正項の見積もり等に影響する。完全な摂動計算を実装した場合、理論による系統誤差が小さくなるため、出来るだけ完全な形で、アトラス検出器シミュレーションに実装したい。実際に前年度の予定である今夏までに計算を完了する計画が実現できるので、近似計算に頼らないアトラス検出器シミュレーションに実装することを目指す。その分、今年度後期は、前期にできなかった物理解析に集中する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
理論計算に目処がついたので、研究計画に変更はない。最終年度の方針は、データ解析を行い、結果を国際会議で報告することである。可能な限り現地研究者と議論を重ねる必要がある。アトラス実験グループ内のワークショップで報告し、認知を深める。
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Causes of Carryover |
日本物理学会がキャンセルされた事、物品購入を延期した事が挙げられる。
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