2021 Fiscal Year Research-status Report
Disentangling forward neutron production of soft QCD and Coulomb scatterings using polarized hadron beam
Project/Area Number |
18K03688
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
三塚 岳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (00566804)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 高エネルギーハドロン散乱 / 非摂動QCD / スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 非摂動QCDシミュレーションの作成 衝突エネルギー200-510 GeV領域での非摂動QCDシミュレーションを作成し、前方中性子および中性パイオンのスピン非対称度を導出した。非摂動QCDはpomeronやreggeonといった仮想粒子の交換によって成り立つ。陽子-陽子散乱から生成される前方中性パイオンの運動を記述するため、令和元年から二年度はreggeon交換によるinclusive過程モデルの作成を行った。今年度はpp→ppπというexclusive過程のモデル計算に取り組んだ。 断面積の比較ではexclusive過程はinclusive過程に対して高々10%程度であるが、横運動量領域によってはexclusive過程によるスピン非対称も無視できない寄与をもたらす。今回作成したモデル計算の検証は、過去にFNAL(衝突エネルギー14 GeV)やISR(衝突エネルギー45 GeV)で得られたexclusiveパイオン生成データを用いて行った。
2) RHIC加速器データを用いた前方中性子のスピン非対称の導出 RHICにおけるPHENIX実験データの解析を進め、研究結果をPhys. Rev. D 105, 032004 (2022)として発表した。研究代表者も携わった先行研究(PHENIX Collaboration, Phys. Rev. Lett. 120, 022001)では横運動量を細かく分割することなくスピン非対称を導出していた。一方本研究では、unfoldingにより横運動量が精度良く求める事が可能となり、0.05 GeV/c程度毎にスピン非対称を導出出来た。研究代表者らが昨年発表したPhys. Rev. D 103, 032007 (2021)では陽子-陽子散乱による前方中性子のスピン非対称のみを扱っていたが、今回は陽子-アルミ、陽子-金衝突も詳細に解析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な課題は、1)クーロンー原子核干渉効果シミュレーションの開発、2)非摂動QCDシミュレーションの開発である。まず1)のクーロン散乱に関して、原子核の形状因子を正確にシミュレーションに実装するには至っていない。計画2)により多くの研究時間を割り振ったため、やや進捗が遅れている。 次に、2)の非摂動QCDシミュレーションの開発は、「研究実績の概要」に記した様に順調に進行している。横運動量が0.3 GeV/c以上ではシミュレートした前方中性パイオンのスピン非対称がRHICf実験結果とも概ね一致している事を確認している。Inclusive過程だけでなくexclusive過程のモデル計算も開始し、reggeon交換の位相シフトを引き起こす初期過程・最終過程での吸収効果を精査している段階である。また、RHIC加速器データを用いた前方中性子のスピン非対称の導出に成功し、研究結果をPhys. Rev. D 105, 032004 (2022)として発表した。本論文では研究代表者も携わった先行研究であるPhys. Rev. D 103, 032007 (2021)で確立した横運動量毎のスピン非対称を再現するunfolding法を、陽子-アルミ、陽子-金衝突にも適用している。 クーロン散乱シミュレーションの開発を除けば、計画通りもしくは前倒しで研究が進んでおり、総合的には概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下の2点である。 1) クーロン散乱シミュレーションの開発を進める。初めに、原子核の形状因子を正確に実装し、クーロン場(電磁場)の強度に相当する仮想光子の数とエネルギー分布のシミュレーションを高精度化する。令和三年度に発表したPhys. Rev. D 105, 032004 (2022)では、陽子-原子核実験データと研究代表者が作成した理論モデルに一定の差異があることが分かる。この差異は、モデルに実装されていない2π生成の寄与によるものと考えられる。従って今後は、2π-MAIDモデルを導入して光子-陽子散乱のシミュレーションを高度化する。最終的にはクーロン散乱と非摂動QCDの干渉効果によるスピン非対称を導出する。 2) これまでに開発した非摂動QCDシミュレーションを改良する。具体的には入射粒子(初期過程)や生成粒子(最終過程)に対する吸収効果を高度化する。現在は入射粒子と生成粒子の間には一回のpomeronまたはreggeon交換しか起こらないと限定している。しかし入射粒子間、または生成粒子間でもpomeronやreggeon、その他ハドロンや光子の交換が可能であり、この様な仮想粒子交換が位相シフトや生成断面積を抑制する吸収効果となる。吸収効果をexclusive過程でも実装し、inclusive過程も合わせてRHICf実験結果と比較する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウィルス感染拡大により、海外出張や国内外会議参加を見合わせたためである。令和二、三年度の予定では国内外の専門家と、非摂動QCDシミュレーションの開発に関して、特に核子およびΔ reggonの結合定数、vertex関数、吸収効果の議論を行うはずであった。しかし、コロナウィルスの影響で海外出張そのものを取りやめたため、海外出張一回分に相当する助成金が未執行となった。 本年度も海外出張可否は見通しが立たないため、その分の旅費を物品費として使用し、シミュレーション開発とデータ解析のために計算機の増強に当てる予定である。
|
Research Products
(1 results)