2022 Fiscal Year Research-status Report
Disentangling forward neutron production of soft QCD and Coulomb scatterings using polarized hadron beam
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18K03688
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
三塚 岳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (00566804)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高エネルギーハドロン散乱 / 非摂動QCD / スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
衝突エネルギー200-510 GeV領域での非摂動QCDシミュレーションを作成し、前方中性子および中性パイオンのスピン非対称度を導出した。非摂動QCDはpomeronやreggeonといった仮想粒子の交換によって成り立つ。 本年度は、陽子-陽子散乱から生成される前方中性子(pp→nX)のスピン非対称を記述するため、reggeon交換によるinclusive過程モデルを作成した。 仮想パイオン交換を主成分とするreggeon交換により前方中性子が生成される。そして生成された前方中性子はビーム陽子との間のpomeron交換により一定の確率で吸収される。パイオン交換と吸収効果によりspin flipとspin non-flip amplitude間に位相シフトが引き起こされ、前方中性子スピン非対称が現れる。本研究では横運動量0-1 GeV/cの範囲で前方中性子スピン非対称を導出し、RHICf実験結果と比較した。 さらに、パイオン交換に続く副次的な成分としてρやa2メソンの交換も起こり得る。ρとa2メソン交換がもたらす断面積がパイオン交換と吸収効果によるスピン非対称を低減する可能性を定量的に議論し、最大で40%程度低減される事が分かった。一方で、a1メソン-パイオン交換の干渉効果による位相シフトとスピン非対称については、干渉効果を初めて示した先行研究で導入された近似式が本研究で扱う1 GeV/c付近では成立しない可能性が考えられる。先行研究を発表した著者らと理論計算の詳細に関して議論を進めている段階である。 本研究の内容を日本物理学会2023年春季大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な課題は、1)クーロンー原子核干渉効果シミュレーションの開発、2)非摂動QCDシミュレーションの開発である。 1) クーロンー原子核干渉効果シミュレーションの開発に不可欠なベンチマークデータの解析は昨年度既に終了している。RHIC加速器データを用いた前方中性子のスピン非対称の導出に成功し、研究結果をPhys. Rev. D 105, 032004 (2022)として発表した。本論文では研究代表者も携わった先行研究であるPhys. Rev. D 103, 032007 (2021)で確立した横運動量毎のスピン非対称を再現するunfolding法を、陽子-アルミ、陽子-金衝突にも適用している。 2)の非摂動QCDシミュレーションの開発は、「研究実績の概要」に記した様に順調に進行している。本年度はパイオン交換と吸収効果によりspin flipとspin non-flip amplitude間に現れる位相シフトによる前方中性子スピン非対称を導出し、横運動量0-1GeV/cの範囲でRHICf実験結果と比較した。計算結果の詳細とRHICf実験との比較を2023年3月の日本物理学会で発表した。 クーロン散乱シミュレーションの開発を除けば、計画通りもしくは前倒しで研究が進んでおり、総合的には概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下の2点である。 1) クーロン散乱シミュレーションの開発を進める。初めに、原子核の形状因子を正確に実装し、クーロン場(電磁場)の強度に相当する仮想光子の数とエネルギー分布のシミュレーションを高精度化する。さらに2π-MAIDモデルを導入して光子-陽子散乱のシミュレーションを高度化する。最終的にはクーロン散乱と非摂動QCDの干渉効果によるスピン非対称を導出する。 2) これまで継続的に開発してきた非摂動QCDシミュレーションを論文にまとめる。 まずreggeon交換によるinclusive過程モデルによる、陽子-陽子散乱から生成される前方中性子(pp→nX)のスピン非対称の記述である。「研究実績の概要」に記したパイオン、ρ、a2メソン以外にa1メソン交換の可能性もかねてから示唆されており、パイオンとa1メソン交換の干渉効果によるスピン非対称を導出する。計算結果をRHICf実験結果と比較し、論文にまとめる。 次に、陽子-陽子散乱から生成される前方パイオン(pp→nX)のスピン非対称の記述である。これには陽子や⊿といったバリオン交換による寄与が主成分である。これらバリオン交換を含んだexclusive/inclusive過程の理論計算を進め、RHICf実験結果と比較する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウィルス感染拡大により、海外出張や国内外会議参加を見合わせたためである。国内外の専門家と、非摂動QCDシミュレーションの開発に関して、特にvertex関数や吸収効果の議論を行うはずであった。しかし、コロナウィルスの影響で海外出張そのものを取りやめたため、海外出張一回分に相当する助成金が未執行となった。 今回生じた次年度使用額は、海外出張1回、シミュレーション開発のための計算機の増強、論文英文校閲などに当てる予定である。
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Research Products
(1 results)