2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03689
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 今日子 東北大学, 理学研究科, 客員研究者 (70377993)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙ダスト / 核生成 / 分子動力学計算 / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では宇宙の重要物質のひとつである鉄がどのように星の周りで凝縮するかを明らかにするため、気相の鉄からの凝縮過程の分子動力学(MD)計算を行った。鉄のMD計算は過去に1例あるが、1000原子程度を用いた少数系の計算しか行われておらず、理論との詳細な比較はされていなかった。本研究では1万から最大100万までの鉄原子を用いたMD計算を行い,気相からの均質凝縮核生成過程を再現した。MD計算の汎用コード(LAMMPS)を用い、鉄の相互作用ポテンシャルは EAM(embedded atom method) を使用し計算を行った。従来より多い粒子数を用いて計算を行うことにより、数桁低い核生成率で進行する現象を再現し、核生成率や分子クラスターのサイズ分布などを求めることができた。また、MD計算結果と核生成理論を詳細に比較するためには、表面張力や平衡蒸気圧などの物性値が必要である。一般にMD計算で用いられる相互作用ポテンシャルから得られる物性値は実際の物質とのずれが生じる場合があり、相互作用ポテンシャルを用いた物性値の導出を行った。本研究では、気液平衡系のMD計算を行うことにより、理論と比較するために必要な鉄の表面張力の温度依存性を導出した。導出した物性値を用いて理論との比較検討を行った結果、今回計算した条件では、臨界核が非常に小さく臨界核が1原子となること、またMD計算で得られた核生成率は理論による見積りよりも数桁程度小さくなることが分かった。この結果は凝縮する際のダイマー生成が困難であることを示唆している。本結果は宇宙ダスト生成の模擬実験結果を考察する上でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気相の鉄の凝縮過程をMD計算で調べる研究は過去にあるが、計算する原子数が少数系の計算のため高い核生成率のみを扱っていたのに対し、本研究では数桁多い系での計算を行うことにより、従来より桁で低い核生成率で進行する現象を再現し、分子クラスターのサイズ分布などの詳細なデータを求めることができた。本結果は宇宙ダスト生成の模擬実験結果を考察する上でも重要な結果であり、成果をまとめて国際学術誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
気相からの凝縮核生成は,宇宙ダスト起源を知るための重要なプロセスであり、分子動力学(MD)計算を用いた研究が近年多数行われているが、未だいくつかの物質に限られている。分子動力学(MD)計算を用いてさまざまな物質の核生成過程を調べ、核生成率がどのように決まるのか調べ、また気相から固相への相変化の際に過冷却の液滴やアモルファス相を経るかどうかなどについて明らかにする。宇宙のダスト生成問題を考える際に有効な凝縮・結晶化過程を扱うことができる理論モデルを整備し再構築し、超新星爆発や赤色巨星などでのダスト生成や、原始惑星系円盤中での加熱過程などに適用する。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度に得られた研究成果の一部を論文としてまとめ投稿する予定であったが、新しい結果の検討により執筆作業が当初の計画より時間がかかっており、投稿料、英文校正、印刷費などに未使用額が生じた。 (使用計画) 投稿準備中の論文を次年度に投稿するため、その投稿料、英文校正、印刷費に使用する。
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Research Products
(8 results)