2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K03689
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 今日子 東北大学, 理学研究科, 客員研究者 (70377993)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 氷 / 核生成 / 分子動力学計算 / 褐色矮星 / 中間圏 / 夜光雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では宇宙環境における固体微粒子(ダスト)の生成と進化に関する総合的な描像の構築を目指し、気相からの核生成や凝縮・結晶化過程を調べている。本年度はこれまで行ってきた気相からの凝縮過程の分子動力学(MD)計算および凝縮・結晶化の理論モデルを、地球大気の中間圏で観測されている夜光雲の形成過程に応用し、その成因を調べた。夜光雲は氷粒子から成るが、その起源については、均質核生成および微隕石からの不均質核生成の2通りが提案されている。本研究では中間圏で取りうる大気条件内の温度(圧力)、冷却速度をパラメータとして、核生成の凝縮計算を行った. 均質核生成の計算を行う際、MD計算や実験の核生成率を再現する高精度の半現象論モデルを用いた。その結果、従来の研究では均質核生成が起きる場合、凝縮温度は100K以上がでおきると考えられていたが、新しいモデルを用いた場合、凝縮温度が60K-90K付近と非常に低い温度になった. 実際に夜光雲として観測される温度は常に100K以上であるため、本結果は中間圏で均質核生成は効率的に起きていないことを示唆する. 一方、中間圏には微隕石の摩擦熱による蒸発・破壊で生成されたダスト粒子が存在しており、不均質核生成の核となりうる. そこで理論的な見積もりにより不均質核生成が卓越する条件を求め、微隕石の観測値と比較した. その結果、観測されているわずかなダスト量でも、不均質核生成が効果的に起こることが示された. また氷粒子が生成する際、氷は非晶質ではなく結晶状態で直接形成される可能性が高いことを示した. 本結果はまとめられ国際雑誌に掲載を受理された。その他、ダストサイズを考慮した褐色矮星の赤外観測のダストサイズ依存性について調べた論文が国際雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球の中間圏における雲(夜光雲)の生成過程について新しい理論モデルを用いて調べることにより, 形成メカニズムを特定することに成功し、この成果についてまとめた論文は国際雑誌の掲載を受理された。また、ダストサイズを考慮した褐色矮星の赤外観測のダストサイズ依存性について調べた論文が国際雑誌に掲載された。また、凝縮核生成過程について、これまでの分子動力学計算では希ガスや氷などの限られた物質でしか行われてこなかったが、高温凝縮物である金属、シリケート、炭素化合物などのさまざまな物質にも適用できるようになり、近年行われた宇宙ダスト模擬実験との比較検討などの研究も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年行われた炭素物質(C,TiC)や酸化ケイ素に関する宇宙模擬ダスト実験と核生成理論との比較を行うことにより、核生成過程を調べる際に重要な物理量である付着確率や表面張力の推定を行う。また宇宙ダストと関連する様々な物質に対して気相からの凝縮過程の分子動力学(MD)計算を行う。特に、近年行われた宇宙模擬ダスト実験で用いられてた物質の計算を行いて実験との比較検討を行い、宇宙環境での凝縮の振る舞いについて推定する。
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Causes of Carryover |
当該年度で計画していた研究会が中止またはオンラインに変更になり、旅費などの未使用額が生じた。また研究成果の一部を論文としてまとめ投稿する予定であったが、当初の計画より遅れたことにより、投稿料、英文校正、印刷費などに未使用額が生じた。 (使用計画) 学会発表の参加費用、および投稿準備中の論文の投稿料、英文校正、印刷費等に使用する。
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Research Products
(5 results)