2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸谷 友則 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90321588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高速電波バースト / 連星中性子星合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速電波バーストに関しては、銀河系のハローに存在する自由電子による分散指標の見積が、様々な解析において重要となるが、これまでのモデルには不十分な点が多かった。そこで、最新のX線拡散放射のデータに基づき、ハローの異方性を初めて考慮したモデルを構築した。今後、FRBの研究やデータ解析において、幅広く用いられることが期待される。また、FRBの起源として注目される連星中性子星合体に関して、その放出物による残光放射の新しいモデルを構築した。それまでの研究では、衝撃波で加熱された全ての電子が非熱的に加熱されるという、物理的にはありえない想定になっていた。我々は、この点を修正し、電子の加速効率を新しい自由度として追加した、より現実的なモデルを構築し、GW170817 の観測データに適用した。すると、これまで知られていた最適解とは異なり、初期の電波領域をシンクロトロンのピーク振動すが通過することで、光度曲線に振動数依存性が見られるような解が得られた。今後、観測データが増えれば、我々のモデルの妥当性が検証できる。さらに、連星中性子星合体が高速電波バーストである可能性を検証するため、連星合体からの電波残光が、高速電波バーストの発生地点で検出できるかどうか、詳細な見積と将来観測への予言を行っている。このアプローチによって、高速電波バーストと連星中性子星合体の関係が明らかになる可能性がある。近年の観測で、高速電波バーストは古い星種族の銀河でも起きることが分かってきていて、これは連星中性子星合体が有力な候補であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速電波バーストを中心に、順調に成果を出せていると考えている。特に、銀河系ハローの電子の分散指標モデルは、今後、世界標準となってくれれば、大きな反響が期待できる。連星中性子星合体からの残光の新モデルも、これまでとは本質的に異なり、より物理的な自然なモデルを提示できたことは大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、高速電波バーストが連星中性子星合体であるというシナリオの検証のための研究を進めている。特に、電波残光のモデルを構築したので、FRB 発生後、数年という時間スケールで、電波残光を探索することで、このシナリオを検証できる。このような研究を現在進めている。
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Causes of Carryover |
3月に参加を予定していた、タイにおける国際会議がコロナ禍のため延期となったため。10月に開催予定であったため、その旅費として使用するつもりで次年度に繰り越した。ただ、その後、コロナ禍の深刻化により、会議そのものが中止となってしまった。コロナ禍の改善状況を見極めつつ、国際会議旅費に充てていきたい。
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