2020 Fiscal Year Research-status Report
水素とヘリウムの超微細構造線観測による宇宙再電離期の電離光子源判別法の検証
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18K03699
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長谷川 賢二 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (20536627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再電離 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に将来的な21cm線観測との比較に向けた理論モデル構築およびオーストラリアの大型電波干渉計MWAの観測データを用いた現状の21cm強度への制限を行った。 理論モデル構築では、まずこれまで行ったシミュレーションデータを用いて21cm線とライマンアルファ輝線銀河との相互相関を見積もった。その結果、相互相関の強度からライマンアルファ輝線銀河のモデル(光子の脱出割合の銀河質量依存性など)を区別できることを示し、これが次世代望遠鏡SKAとSubaru HSCを用いることで検出できることもわかった。また、水素・ヘリウムからの宇宙論的シグナルを高速に計算できるよう、準数値的シミュレーションコードを開発した。この計算はこれまで行った大規模輻射輸送シミュレーションにくらべて計算が簡略化されているが、従来の準数値的計算コードには組み込まれていなかった電離光子脱出過程や加熱といった物理を組み込んでいる。これにより高速に水素のシグナルを計算できることが可能となり、宇宙初期の21cm線シグナルから宇宙初期の典型的星質量や宇宙論的星形成率がわかることも示した。さらに、宇宙初期の超低質量ハローからの21cm線強度をみつもり、このようなハローの存在個数について制限を与える方法を示した。 最後に既存のMWA観測データも用いた研究では、宇宙再電離期の21cm線のパワースペクトルについて、直接検出こそできないものの、これまでの観測でもっとも強い制限を与えた。これによりいくつかの極端な再電離モデルを棄却することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来の計画では、MWAを用いた再電離研究が盛んなメルボルン大学へ滞在しそこでデータ解析を学びつつ、最新の観測データを用いた水素・ヘリウムシグナルへの制限を行い、それをシミュレーションデータと比較する予定であったが、COCID-19の影響により渡航の目処が立たず観測データを用いた独自の解析は断念した。またシミュレーションデータにも不備が見つかったため、いくつかのシミュレーションを再実行する必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
自らMWAの観測データを解析することは、1)データ解析の現地研修の見通しが立たないこと、2)現状MWAのスペックではヘリウムの観測が不可能であることから、当初の計画を変更し、観測データとシミュレーションデータの比較は断念する。 その代わり、理論研究の方を充実させる。具体的には当初予定になかった、高速に宇宙論的シグナルを計算する準数値的計算コード開発をさらに発展させる。現状は水素からのシグナルのみ計算可能だが、これをヘリウムまで計算可能にする。 さらに、いくつか不備のあった大規模輻射輸送シミュレーションを再実行し、水素・ヘリウムの空間分布の相互相関と再電離モデルの関係をあきらかにするとともに、次世代大型電波干渉計SKAでの観測可能性についても示す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、当初予定していたオーストラリアへの渡航が困難となり、現地滞在による観測およびそのデータの解析が行えなかったため。 また、渡航の可能がどうかが判明しない時期が長かったため購入予定だったシミュレーションデータ解析のパソコンの予算が定まらず購入を先送りした。
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