2021 Fiscal Year Research-status Report
太陽磁場の状態遷移:電磁流体計算で探る太陽活動のグランドミニマムへのトリガー
Project/Area Number |
18K03700
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
政田 洋平 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30590608)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱対流 / 乱流輸送 / ダイナモ / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、太陽活動グランドミニマム期のトリガーとなる物理を電磁流体計算で明らかにすることである。特に注目しているのが熱対流の「統計的揺らぎ」である。系の粘性と熱拡散、回転率の大きさをパラメトリッ クに変化させることで、熱対流が担う乱流起電力の揺らぎの振幅を変化させ、乱流場の統計的性質とグランドミニマムモードの発現の関係を定量物理的に調べる。太陽磁場の状態遷移のトリガーとなる乱流場の時空間構造を同定することが本研究の最終目標である。 R2年度までに、局所駆動型熱対流と冷却駆動型熱対流では、(i)乱流による動径輸送フラックス(turbulent mass fluxやturbulent energy flux)の空間分布に顕著な違いが生じること、(ii)前者は勾配拡散型の理論モデルで記述できる一方、後者を記述できる理論が存在しないこと、(iii)スペクトル的には、後者の方が観測と整合的であること、等を明らかにした。 R3年度は、まず冷却駆動型の乱流輸送を説明する新しい理論モデルを提唱、その理論モデルとシミュレーション結果を定量的に比較し、一連の成果を投稿論文としてまとめた(Yokoi, Masada, & Takiwaki, 2022, MNRAS:受理済み)。この論文では、下降流プルームが担う間欠的な輸送を考慮することで、冷却駆動型熱対流による輸送を定量的にモデル化できることを示した。さらに、現実の太陽熱対流を正しく理解するための新しいツールの獲得を目指し、データサイエンス的研究にも着手した。これは熱対流シミュレーションのデータを教師データとしたニューラルネットワーク(NN)を構築する方法であり、この手法を使うことで、従来の観測では取得困難だった太陽熱対流に関する情報を、太陽表面のデータから抽出できることを明らかにした(Ishikawa et al. 2022, A&A)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度に、冷却駆動型熱対流による乱流輸送を理論的にモデル化する手法を確立できたことは、本研究において重要な前進である。理論モデルを構築したことで、間欠的な下降流プルームが乱流輸送に "大きく" 寄与することを定量的に示すことができ、ダイナモを含む太陽内部物理の理解にとって、非定常・非平衡な流れによる物質・運動量・エネルギー輸送の理解が極めて重要であることを明らかにできた。また、太陽熱対流の観測的な理解を促進する手段として、シミュレーションデータと深層学習を組み合わせる新手法を提案できた点も収穫であろう。一方、当初(R3年度のはじめに)予定していた計画:冷却駆動型熱対流とそれに起因したダイナモ、それらのレイリー数やロスビー数に対する応答の調査、については大きな前進が得られていないため、研究の進捗としては遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、冷却駆動型熱対流によるダイナモと、そのレイリー数およびロスビー数に対する依存性を、詳しく調査する予定である。新型コロナウィルス感染症の感染拡大は続いているが、海外渡航ができる環境は整いつつある。まず、当該分野の国際会議に参加し、我々のこれまでの研究成果について海外のエキスパートと幅広く議論することで、我々の上記研究の方向性を確認することからスタートしたい(6月に太陽ダイナモに関するトップエキスパートのみの国際会議に招待講演者として参加予定)。最終的には、冷却駆動型熱対流が担う乱流場および乱流起電力場の統計的性質が、準周期的磁場のグランドミニマムモードの発現にどのように影響するかを、定量物理的に明らかにすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響で、予定していた海外渡航(国際会議への出席)ができなかったため。海外渡航制限が緩和されたため、今年度は複数の国際会議に参加予定であり、次年度繰越金は国際会議への参加に充てる予定である。
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