2022 Fiscal Year Research-status Report
太陽磁場の状態遷移:電磁流体計算で探る太陽活動のグランドミニマムへのトリガー
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18K03700
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
政田 洋平 福岡大学, 理学部, 准教授 (30590608)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱対流 / 太陽 / プラズマ / 非平衡輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, 強密度成層下の2種類のMHD熱対流シミュレーションモデルを定量的に比較することで、対流が担う乱流輸送について研究を行った。用意したのは①局所駆動型の熱対流モデル、と②冷却駆動型(非局所駆動型)の熱対流モデル、である。局所駆動型モデルでは, 計算領域全域をsuper-adiabaticに設定し, 負のエントロピー勾配で局所的に対流を駆動する。一方, 冷却駆動型モデルでは, 計算領域の大部分はadiabaticな状態に設定し, 計算領域の表面にのみ『光球における放射冷却』を模擬した冷却関数を組み込む。冷却によって熱エネルギー(エントロピー)を失った流体素片が、負の浮力によってadiabaticな下層域に落ちていくことで、コヒーレンスの高い対流が非局所的に駆動される。これら2つの熱対流モデルから『乱流energy fllux』を抽出し、定量的に比較した結果、以下の2点を明らかにした: ①局所駆動型熱対流による乱流energy fluxは、渦粘性を仮定した勾配拡散モデルで再現できる ②冷却駆動型熱対流による乱流energy fluxは、勾配拡散モデルからは大きく乖離している 冷却駆動型熱対流による乱流energy fluxには、対流層表面直下で大きなenhancementが見られ、これを説明するために、下降流プルームによる非平衡な熱輸送を考慮する必要があることがわかった。我々はコヒーレントな対流プルームによる非平衡な熱輸送まで考慮した乱流輸送の理論モデルを構築、そのモデルを使って、冷却駆動型熱対流による乱流エネルギー輸送を定量的に再現できることを示した。これらの成果は、Yokoi, N., Masada, Y. , Takiwaki, T. (2022), MNRAS, Vol. 516, 2, pp.2718-2735としてまとめられ、出版済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、熱対流ダイナモシミュレーションにおいて、系のレイリー数をパラメトリックに変化させることで、熱対流が担う乱流起電力の『揺らぎの振幅』をコントロールし、揺らぎが系の磁気状態進化に及ぼす影響を系統的に明らかにすることを計画していた。しかし、熱対流の駆動機構そのものが、対流の振幅、ひいては乱流起電力に大きな影響を及ぼすことがわかったため、それを定量的に調べる研究を先に実施した。 対流の物理は、ダイナモ理論の根幹にかかわるため、今年度実施した研究はその本質理解に向けての重要な礎になったと考えているが、現状の研究の方向性は本来の計画からは外れたものであるため、進捗状況としては少し遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で開発した「強密度成層下の2種類のMHD熱対流モデル」に自転の効果を加えることで、両モデルでの自発的な磁場形成をシミュレートする。対流駆動機構(局所駆動型 or 冷却駆動型)がダイナモプロセスに及ぼす影響を調べることを第一の目標とする。次に、二つのモデルでRa数をパラメトリックに変化させ、熱対流ダイナモの長時間進化計算を行う。Ra数を変えることで熱対流の揺らぎの大きさが変化することが期待される。Ra数の変化が、系の磁気状態進化に及ぼす影響を網羅的に調べることをこの研究の目的とする。さまざまな熱対流ダイナモモデルの長期進化を追うことで、活動性低下期(グランドミニマム期)の発現、およびそれが発現するモデルを抽出し、状態遷移前後の乱流場分布を定量的に比較することで、遷移をトリガーする決定的構造を同定することを最終目標とする。
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Causes of Carryover |
主著論文の論文出版が遅れたため次年度使用額が生じた。繰越金は、現在投稿中の論文の出版費用に使う予定である。
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