2019 Fiscal Year Research-status Report
磁場に貫かれたフィラメント状分子雲の自己重力不安定性と星形成
Project/Area Number |
18K03702
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
工藤 哲洋 長崎大学, 教育学部, 教授 (60413952)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
星の誕生の母体となる密度の高いガスの塊の形成過程を研究している.特に,そのガス塊の形成に磁場がどのような役割を果たしているのかを,電磁流体力学を用いて理論的に研究している.星の形成に磁場が関係していることは知られている.しかし,磁場が具体的にどのような影響を与えているのかは,まだよくわかっていない.理論的な結果を積み重ねて,観測と比較できる特徴を探している. 星の誕生の現場となる分子雲は,細長いフィラメント状の構造をしていることが観測からわかってきている.また,その細長い構造の軸に垂直な方向には,大きなスケールの磁場が観測されている.私たちの研究は,そのような構造は磁場の強さに関わらず自らの重力のため不安定になり,密度の高い塊に分裂していくことを理論的に明らかにした.一般的に,磁場はガスの分裂を阻害する働きがある.しかし,ガスが細長いフィラメント構造をしている場合には,どんなに強い磁場でも分裂を阻害できないことが示された.一方で,同様の数値シミュレーションの結果,分裂したガスの塊は,ある程度強い磁場があるときは,磁場のために収縮できず,その中で星の形成が起こらない「星なしコア」となることもわかった. そこで,次に分子雲内で働くと考えられている両極性拡散を含めた数値シミュレーションを行った.両極性拡散を含めると,磁場が強い場合でも,コアが形成された後に暴走的な収縮が生じた.その全体のタイムスケールは,両極性拡散がない場合に「星なしコア」が形成される時間とほぼ同じだった.初期の分子雲での両極性拡散の時間は重力不安定の成長時間の約10倍長い.しかし,フィラメントが分裂すると磁場や密度が増大し,ガス塊の両極性拡散時間は短くなる.そのため,磁場が強い場合でも,フィラメント状分子雲から暴走的な収縮までの時間が,分子雲が分裂する重力不安定の成長時間とほぼ同じになったと考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の業務などの影響で,数値シミュレーションの結果を論文にすることが遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの数値シミュレーションの結果を査読論文にすることを優先して進めたい.それと並行して,.両極性拡散を含めた数値シミュレーション結果の検証と解析を行なっていく予定である.
|
Causes of Carryover |
3月の日本天文学会春季年会が新型コロナウィルスの影響のためオンラインで開催となり,旅費がかからなかったため次年度使用額が生じた.2020年度はオンライン開催の研究会が想定されるので,必要に応じてそのための機材やソフトウエアなどに充てたいと考えている.
|