2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03704
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北山 哲 東邦大学, 理学部, 教授 (00339201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銀河団 / ミリ波 / サブミリ波 / X線 / 宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いて、赤方偏移0.6に位置するフェニックス銀河団(SPT-CLJ2344-4243)によるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果を5秒角の高解像度で測定することに成功した。その結果、同銀河団中の電離ガスの圧力分布が他の遠方銀河団よりも有意に中心集中していること、中心付近でのガス温度は外層部の5分の1程度にまで急峻に冷却していること、測定誤差の範囲内では有意な圧力ゆらぎや非対称性は見られないことなどが明らかになった。これらは、フェニックス銀河団中の電離ガスが効率的かつほぼ等圧的に冷却しつつあることを強く示唆しており、他の銀河団で普遍的に観測されてきたガス冷却の抑制に対する興味深い反例を提供している。 また、チャンドラ衛星によるX線データおよびハッブル宇宙望遠鏡による重力レンズ効果データが揃っている計12個の近傍銀河団の内部構造を系統的に調査した結果、見かけ上安定した形状をもつ銀河団の約8割以上においてガスが揺動している兆候が普遍的に認められること、揺動するガスはほぼ圧力平衡状態にあること、揺動するガスはもともと付随していたダークマター塊から既にはぎとられている可能性が高いことなどを明らかにした。 更に、宇宙論的大規模流体シミュレーションを用いて、銀河団の中心銀河とダークマターハローの空間分布の時間進化を調べた。その結果、中心銀河およびダークマターハローの主軸方向は、時間とともに相互相関が強くなり、現在の宇宙では約30度以内に揃うことがわかった。ダークマターハローの主軸方向は、銀河団を取り巻く大規模構造に強く影響を受けることから、現在観測される中心銀河の主軸の向きにも、宇宙初期の密度ゆらぎの分布が反映されていることが示唆される。 以上の成果は、いずれも査読付き論文として国際的な学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALMAなどを用いた複数の研究成果が得られ、論文として出版されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果をさらに発展させつつ研究を進めたい。特に、ALMAを用いた銀河団プラズマの研究に関して、複数の観測提案が採択されているので、それらを用いた研究に重点をおく予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたワークステーションの価格が上昇したため、次年度以降の配分額と合算して購入することとした。
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Research Products
(9 results)