2020 Fiscal Year Research-status Report
ホモキラリティーの起源を星間アミノ酸に探る-キラル中心をもつ前駆体の分光学的研究
Project/Area Number |
18K03705
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 かおり 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80397166)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アミノ酸前駆体 / ホモキラリティー / マイクロ波分光 / 星間物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホモキラルな生体関連分子の起源を星間空間に求めることができるかどうかを確かめる第一歩として、キラリティーを持つ分子の探索が考えられる。本研究は、最も単純なキラルアミノ酸であるアラニンの前駆体の一種である、5-メチルヒダントインについて、その分光データを取得し、天文コミュニティーに提供することを目標としている。 研究2年目までに基底状態の帰属は終了し、天文観測に重要な低エネルギーの回転準位に関する情報は、十分な精度で提供できるようになった。現在は天文観測の上で特に重要となる低エネルギー振動励起状態について、帰属を進めている。本研究の最初のステップとして実施した、160GHz帯の10GHz規模のラインサーベイ観測において、振動基底状態のほか4種類の振動励起状態が測定可能であるという見通しをつけ、その後の精密周波数測定を進めていった。精密周波数測定は、観測したスペクトル線の量子数の帰属を進めつつ、分子定数を少しずつ確定していくというプロセスである。振動基底状態は、通常の解析を進めていけばよいのであるが、振動励起状態の場合は励起状態間の相互作用が存在することにより、特定のエネルギー準位について、周波数がずれることがしばしば考えられる。この場合、相互作用の種類が明らかになっていれば問題ないか、不明のまま解析を進めるのは、いわゆる帰属ミスを誘発する可能性が高く、繰り返し実験結果を見直す作業が不可避である。本研究においても第4振動励起状態がまさにそれに該当し、本研究実績執筆時点でまだ完全に解決していない。残りの3種類の振動励起状態の内、第1振動励起状態については、他の振動励起状態との相互作用が極めて弱いと考えられ、特定の相互作用を考慮しなくとも分子定数の精密決定および十分な精度での遷移周波数の予想が可能であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5-メチルヒダントインの振動励起状態の帰属を進めており、当初おおよそ確認できた4種類の振動励起状態の遷移周波数精密測定を続けている。 これらの結果を論文にまとめて投稿予定であったが、コロナ禍と体調不良により年度前半はほとんど実験ができなかった。後半にかけて若干巻き返しを図ったが、4番目の振動励起状態の帰属が完全ではなく、結果を公表するレベルに至ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
4番目の振動励起状態の帰属は一旦後回しにして、現在論文をまとめる作業に取り掛かっている。2021年度のできるだけ早い段階に天文関連雑誌への投稿を終わらせたい。
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Causes of Carryover |
論文投稿代として確保していたが、当該年度に投稿ができなかったため、次年度使用となった。現在論文執筆中であり、早急に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)