2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on binary evolutions with physical process around neutron star: Application to neutron star ULX
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18K03706
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
鴈野 重之 九州産業大学, 理工学部, 准教授 (20615364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 連星進化 / 中性子星 / X線連星 / 降着円盤 / 超高輝度X線天体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度までに開発した連星進化コードを星風降着する中性子星に応用し,中性子星物理量とそのスピン進化の関係を明らかにした.2020年度前半には,この結果を学術論文としてまとめ,査読の後に出版した. さらに,中性子星を起源とするUltra-luminous X-ray source (ULX)について研究を行った.ULXの中心天体の一部は中性子星であると考えられているが,しかし,なぜ中性子星がエディントン限界光度以上の明るさで輝くのかについては明らかでない.そこで,連星進化の観点からこのような中性子星起源のULXの正体を探ることが本研究の目的の一つであった. 近年の観測により,X線パルスを示すULX(PULX)の一部はBe型のドナーを持つことが示唆されており,またいくつかのPULXはスピン周期と軌道周期の関係を示すコルベット図上でBe型の大質量X線連星系(HMXB)と同じ領域に位置することがわかっている.このことから少なくとも一部のPULXはBe型HMXBの特殊な例であることが推測される.そこで,当該年度の研究では,Be型HMXBの質量降着モデルと,中性子星降着円盤モデルを組み合わせることにより,Be型HMXBがULXとして観測される条件を探った. 結果として,中性子星磁場やBe星円盤の密度などが一定の条件を満たせば,Be型HMXBはPULXとなり得ることが示された.とくに,軌道周期が10日のオーダーであり,軌道離心率の小さい系が高輝度X線放射の上では有利であることを明らかにした.一方で観測される一部のPULXにはBe型ドナーでは説明できない連星パラメタを示すものもあることもわかった.このことは,現在はまだPULXの観測例が少ないものの,将来的に観測例が増えることで,PULXの更なるサブカテゴリが見えてくる可能性があることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度までの研究において,当初の最大の目標であったコンパクト天体を持つ連星系の進化計算手法は概ね確立されていた.この手法を星風降着する中性子星連星系に当てはめることにより,連星系における中性子星の回転進化プロセスを明らかにし,また中性子星の磁場などの物理量とスピン進化の関連性を明らかとした.この結果は既に学術論文として出版されている.また,2020年度の目標は,本研究課題で開発された連星進化計算手法を超高輝度X線天体(ULX)に応用することであった.そこで,特にBe型のドナーを持つ連星系にターゲットを絞り,中性子星への質量降着率がエディントン限界を大きく超える条件付けを試みた.この結果は現在学術論文として出版を準備中である. 一方,本研究課題の当初予定としては,発展的課題として連星進化計算を持ちいたpopulation synthesis計算を行うことで,ULXの統計量まで調べることを挙げていた.今年度は研究自身は概ね順調に進んだものの,コロナ禍のために予定していた研究会が中止になったり,学外の研究者との議論ができなかったりした点で,予定通りにいかなかった面もある.そこで,研究期間を1年延長することで,アウトプットや議論に十分な機会を確保するとともに,発展的課題にまで取り組むことを予定している. 以上のことから,本研究はコロナの影響は受けつつも当初課題のベースラインはクリアしており,今後は発展的な課題にまで挑戦する段階にあり,全体としては概ね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初3年間の予定であったが,2020年度はコロナ禍の影響で研究会参加や学会発表などの学外での研究活動が予定通り進められなかった.そこで,研究期間を1年延長することで,2020年度に実行できなかった活動を取り入れ,研究全体をブラッシュアップすることを目指す. 本研究の当初予定としては,発展的課題として連星進化計算を持ちいたpopulation synthesis計算を行うことで,ULXの統計量まで調べることを挙げていた.研究最終年度では,この発展的課題に取り組む予定である.連星進化コードは既に完成しており,また2020年度の研究で,中性子星連星がULXとなる条件を描き出してきたので,この条件を連星進化計算に組み込むことで,中性子星を含むULXのどれほどがULXとなり得るのかを明らかにしていきたい.また,このような計算により,ULXの最大の課題である,ブラックホールと中性子星の比率についてもヒントが得られるものと期待している. また,研究の最終年度ということもあり,これまでの研究を総括し,学会や研究会での発表,関連研究者との議論,学術論文としての出版などのアウトプットについても積極的に行っていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
本来であれば研究会・学会参加のために海外出張1回(サンクトペテルブルグ)と国内出張2回(いずれも東京)を予定していたが,新型コロナウイルス感染症蔓延の影響でこれらの出張がすべて中止となった.そのため,旅費の使用予定額に大きな差異が生じてしまった.次年度は可能であれば研究会・学会等に参加し,アウトプットや議論を重ねるための旅費支出を検討している.さらに,研究期間を一年延長したことで,さらなる結果が得られる予定であり,学術論文出版のための投稿費用などにも経費が必要となる.また,次年度使用額の一部は,本研究課題でこれまでに得られてきたノート,資料や結果などをデータ化し,まとめていく費用に利用したいと考えている.
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Research Products
(2 results)