2019 Fiscal Year Research-status Report
銀河系の大局的物質混合史の解明:何がいつどのように星の大移動を引き起したのか?
Project/Area Number |
18K03711
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
馬場 淳一 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 特任研究員 (90569914)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 貴之 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40399291)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 天の川銀河 / 位置天文学 / 化学動力学 / シミュレーション / 渦状腕 / 棒状構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は天の川銀河 (銀河系) の数値シミュレーションと、位置天文観測衛星 Gaiaなどの最新データを用いて、星の軌道移動を伴う銀河系の化学動力学進化過程を明らかにするものである。特に、渦状腕構造の動力学的性質 (密度波モデル / 動的化上腕モデル)、棒状構造の性質や形成時期、射手座矮小銀河などからの 摂動の効果に着目した、銀河系の化学動力学進化の研究である。本年度は以下のような研究成果を得た。 1) N体/流体シミュレーションコード ASURAを用いた天の川銀河のN体/SPHシミュレーションにより、棒状構造の形成がバルジ領域へのガス流入を促し、スターバーストとともに中心核バルジ形成を起こすことを確認した。この結果から、中心核バルジの星の位置・速度情報から前景のディスクや背景の古典バルジと観測的に分離することで、天の川銀河における棒状構造の形成時期推定が可能となることを示唆した (Baba & Kawata 2020)。この結果は将来の赤外線位置天文観測衛星「小型JASMINE」が狙う一つのサイエンスケースになり得る。 2) ASURAを用いて、矮小銀河からの重力摂動を含む天の川銀河のN体シミュレーションにより、銀河円盤外縁部の星が太陽近傍まで軌道軌道し得ることを示した。これは太陽近傍で観測される高い[Eu/Fe]を持つ星の起源となり得ることを議論した (Tsujimoto & Baba 2019)。 3) Gaiaで観測された太陽近傍 1 kpc内の古い星 (年齢~1 Gyr) の密度マップを作成し、従来主にガス成分から成ると考えられてきた局所腕に古い星の密度超過が付随する可能性を指摘した。さらに、電波干渉位置天文観測 VERAによる星形成領域の分布と比較することで局所腕の動力学声質に関して議論した (Miyachi et al. 2019)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置天文観測衛星 Gaiaデータを利用した渦状腕の研究、および数値シミュレーションを用いた棒状構造や矮小銀河摂動による天の川銀河内での物質(星・ガス)混合過程の研究に関する成果を査読付き論文として発表することができた。特に、棒状構造形成時期の推定 (Baba & Kawata 2020) に関して、将来の赤外線位置天文観測衛星「小型JASMINE」へのサイエンスケース提示となったことは重要である。また、局所腕の古い星の密度超過候補の発見については、可視光位置天文観測であるGaiaでは、星間減光の影響でこれ以上詳細に調べることは難しく、Gaia後継機候補の赤外線位置天文観測衛星「GaiaNIR」の必要性を示唆することにもつながったと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
棒状構造形成に伴う中心核バルジ形成の研究 (Baba & Kawata 2020) を発展させ、棒状構造形成がより大きなバルジ構造やディスク構造(特に太陽系自身の軌道移動)にどのような痕跡を残すのかという観点で、数値シミュレーションと位置天文観測データを用いて研究を進めていく計画である。また、棒状構造形成とその鉛直振動 (buckling) や矮小銀河摂動によるディスクの湾曲 (warping) に関して、数値シミュレーションから定量的に調べ、Gaiaデータやセファイドなどの変光星データとの比較を行い、研究結果をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
海外の共同研究者の来日旅費に充てる予定であったが、別の経費で補えたため次年度使用額が生じた。繰越分と来年度予算は、主に論文出版のための費用として利用する。また、研究データ保存のためのストレージなどの計算機関連部品の購入に利用する。
|
Research Products
(5 results)