2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03722
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
癸生川 陽子 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70725374)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小天体 / 隕石 / 変成 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系形成初期に,小天体内部で起こった水質変質や熱変成などの化学的プロセスは,始原的な隕石に含まれている複雑・多様な有機物の最終的な化学組成・構造の形成に重要な役割を果たしたと考えられる。しかし,有機物の化学的プロセスに対する鉱物の役割(触媒作用等)はほとんど明らかになっていない。その理由として,隕石内の微量な有機物の化学的特徴と鉱物との共存関係をその場分析する手法が極めて限られていることや,実験的裏付けが不足していることが挙げられる。そこで本研究では,隕石母天体における変成過程での有機物の変成過程に対する鉱物の影響を明らかにするため,模擬実験及び隕石の分析を行った。 (1)分子雲有機物のアナログ物質として複数の化合物を混合したもの,及びそれにカンラン石または粘土鉱物(モンモリロナイト)を加えたものを用意し,200℃~400℃での加熱実験を行った。その結果,特に酸素を含む官能基の構造変化に対するモンモリロナイトの影響が顕著であることが分かった。 (2)隕石母天体における水質変成過程を模擬した,ホルムアルデヒド・アンモニアの水熱実験からのアミノ酸の形成に対するカンラン石,蛇紋石,モンモリロナイトの影響を調べた。その結果,含まれる鉱物によって,生成されるアミノ酸の種類・量に異なる傾向が見られた。 (3)走査型透過X線顕微鏡(STXM)及び分子間力顕微鏡を用いた赤外分光法(AFM-IR)による,炭素質コンドライトの局所分析を行った。その結果,変成度の異なる部位に存在する有機物の構造に差異が見られるとともに,その構造の違いが鉄の酸化還元状態と相関があることが示された。 以上の結果は,小天体に存在する有機物の分子構造変化に対する鉱物の影響が顕著であることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記(1)の結果はGeochimica et Cosmochimica Acta投稿済みである(Hirakawa, Kebukawa et al.)。(3)のAFM-IRの結果はPNASに掲載された(Kebukawa et al. 2019 PNAS)。(2)及び(3)のSTXMの結果についてもおおよそ論文投稿ができる結果が出ており,数か月中に投稿見込みである。したがって,初年度としては十分な結果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については,有機物の加熱変化に対する粘土鉱物(フィロケイ酸塩)の影響をより詳細に検討するため,数種類のフィロケイ酸塩を入手しており,本年度に実験を行う予定である。 (2)については,熱力学計算を取り入れ,温度や出発物質の混合比など諸条件の違いによる生成アミノ酸の違いを明らかにする。また,有機物抽出処理後の隕石サンプルを用いて実際の隕石に含まれる鉱物組み合わせによるアミノ酸生成への影響を調べる。 (3)については,分析サンプル数があまり多くないため,多様な変成度の隕石の分析を行い,有機物の分子構造的特徴及び共存鉱物を系統的に調べる
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] A novel organic-rich meteoritic clast from the outer solar system2019
Author(s)
Yoko Kebukawa, Motoo Ito, Michael E. Zolensky, Richard C. Greenwood, Zia Rahman, Hiroki Suga, Aiko Nakato, Queenie H. S. Chan, Marc Fries, Yasuo Takeichi, Yoshio Takahashi, Kazuhiko Mase, Kensei Kobayashi
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: 3169
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Heating experiments of the Tagish Lake meteorite: Investigation of the effects of short‐term heating on chondritic organics2019
Author(s)
Queenie H. S. Chan, Aiko Nakato, Yoko Kebukawa, Michael E. Zolensky, Tomoki Nakamura, Jessica A. Maisano, Matthew W. Colbert, James E. Martinez, A. L. David Kilcoyne, Hiroki Suga, Yoshio Takahashi, Yasuo Takeichi, Kazuhiko Mase, Ian P. Wright
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Journal Title
Meteoritics & Planetary Science
Volume: 54
Pages: 104-125
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Organic Matter in Carbonaceous Chondrite-like Xenolithic Clasts: Preserving Unique Records in the Solar System2018
Author(s)
Yoko Kebukawa, Motoo Ito, Michael Zolensky, Richard Greenwood, Zia Rahman, Hiroki Suga, Aiko Nakato, Queenie Chan, Marc Fries, Yasuo Takeichi, Yoshio Takahashi, Kazuhiko Mase, Kensei Kobayashi
Organizer
AOGS 15th Annual Meeting
Int'l Joint Research / Invited
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