2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on the thermal history of the earliest stage of the solar system
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18K03729
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
木村 眞 国立極地研究所, 研究教育系, 特任教授 (20142226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 憲路 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00571093)
小松 睦美 総合研究大学院大学, 教育開発センター, 助教(特定有期雇用) (50609732)
今栄 直也 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60271037)
山口 亮 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70321560)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超難揮発性包有物 / エンスタタイト / 太陽系初期 / コンドライト |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系初期に起こった現象やその段階における物質進化については観測や理論的解析により概略が明らかになってきているが、その詳細を知るためには物質科学的研究、とりわけ隕石からの情報が欠かせない。本研究ではある種のコンドライト隕石に含まれる「超難揮発性包有物」と呼ばれる特異な物質に着目する。これらは従来の研究により太陽系最初期に形成されたと予想されているものである。しかしながら、これまでは研究例が少なく、十分な情報が蓄積されていなかった。本研究ではこの超難揮発性包有物を組織的に観察・分析し、その鉱物学的、地球化学的特徴を明らかにすることを目的としている。 本年度においてはCRコンドライト中の難揮発性包有物に含まれる超難揮発性包有物を発見し、そこに含まれる鉱物種の同定、及び鉱物組成の検討を行った。その結果、この難揮発性包有物は1800Kという高温状態で凝縮を開始した鉱物がまず集積し、その後周囲のガスとの反応が十分行われない状態で1300K程度までの鉱物を集めて形成されたことを明らかにした。この結果は太陽系最初期にどのような鉱物がどのような環境で形成されたかに関する制約を与えるものである。 特にエンスタタイトと呼ばれる太陽系でも最多の鉱物の一つは従来はカンラン石とガスとの反応で生じるとされていたが、本研究によりカンラン石とシリカ鉱物との固相反応でも生じることが明らかになった。これはエンスタタイトの形成に新知見を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では2つの研究対象を検討した。 1)超難揮発性包有物を見出すために国立極地研究所に所蔵されている炭素質コンドライト試料を多数調査し、超難揮発性包有物の隕石における存在度と特徴を明らかにしようとした。現時点では調査対象試料がまだ十分ではなく、超難揮発性包有物の存在度を定量的に求めるまでには至ってはいない。ただ、予想通り、それが少ないこと、またごく少数であることは明らかになった。 2)上記実績欄にも記載したCRコンドライト中の超難揮発性包有物に関しては詳細な鉱物学的検討を行った。鉱物から形成環境を明らかにした。この成果に関しては論文として公表した。またエンスタタイトの詳細な観察及び分析から、その形成過程に関する新しい知見も得られた。その形成条件に関しては既存の実験的研究結果を参考に温度や時間を推定することもできた。この結果は学会で公表した。 以上の研究実績からみて本研究は概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の検討を行っていく予定である。 1)鉱物学的検討: さらに炭素質コンドライト試料を系統的に調査し、超難揮発性包有物の存在度、特徴を明らかにしていく。またエンスタタイトに関する新しい知見をさらに深めるために相の同定や元素組成分析を改めて行う。また研究代表者が従来行っていた超難揮発性包有物の研究結果との比較も行う。 2)微量元素組成分析: 超難揮発性包有物中の希土類元素や他の微量元素の測定を行う。これらの元素の分布や濃度の高精度測定は凝縮理論で予測されている元素分布と比較して、形成環境を明らかにするために重要である。 3)実験的研究: 超難揮発性包有物を構成する鉱物の多様性がどのような環境を反映しているかについて明らかにするために実験的研究が欠かせない。電気炉を用いて超難揮発性包有物の推定される形成環境を再現し、鉱物の多様性を明らかにする。 4)理論的研究: 以上のデータにより超難揮発性包有物の特徴が明らかになるが、これと凝縮理論で予測されている原始太陽系最初期に生じる鉱物と比較して、形成環境を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初計画の分析用消耗品の一部の発注を試料調査の結果を詳細に検討する必要が生じたため見合わせた。それを次年度分として請求し、本研究遂行のために必要な分析用消耗品の購入に一部をあてる。また成果発表のための学会出張が当初予定より増えたことに伴い、一部を旅費として使用する予定でいる。
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Research Products
(4 results)