2019 Fiscal Year Research-status Report
Formation mechanism of Mercury based on surface composition and mineralogy
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18K03732
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
大竹 真紀子 会津大学, コンピュータ理工学部, 教授 (30373442)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水星 / 地質区分 / 反射スペクトル / 月との比較 / 宇宙風化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には,月の反射スペクトルを用いて鉄量の推定に用いられている手法(反射率と吸収強度を組み合わせた手法)を水星の反射スペクトルに適用することで,水星においても表層をいくつかの地質に分類が可能であることを確認した.また,それら区分とガンマ線等他の観測機器によって得られた水星の元素分布とを比較することにより,今回反射スペクトルに適用した該当の手法の妥当性について検証した結果,反射スペクトルによる地質区分と元素分布とにある程度の相関があり,該当手法の有効性が確認できた. 2年目の年度では,初年度に実施した反射スペクトルを用いた地質区分結果に基づき,各地質領域の物理・化学特性(岩石・鉱物の種類,元素組成,形成年代,地形特徴)の抽出を行った.結果として,初年度に行った反射スペクトルによる地質区分と水星探査機メッセンジャーの観測による元素組成との間には確かに関係性があるものの,例外となる領域も存在することがわかった.また,他の地形特徴や形成年代(具体的にはクレータや盆地)との比較からは,比較的新しく形成されたクレータの周辺では両者に明瞭な相関が見られた(クレータの周辺では放出物が分布するため,その部分が異なる地質区分として識別されている).一方で,形成後時間が経過しているクレータの周辺では,相関が確認できなくなっている傾向にあることがわかった.この原因として,現在のところ,水星では類似する岩石天体である月に比べて太陽に近く,太陽風の照射によって起こる宇宙風化作用が強いためにクレータ周辺での放出物による地質的な(反射スペクトル上の)特徴が弱まる(ないしは無くなる)可能性があると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の年度では,水星探査機メッセンジャーにより取得された反射スペクトルの解析を行うとともに,それらと比較するための水星物質の地上模擬物質を作成し,模擬物質の反射スペクトル測定を行うことを予定していた.反射スペクトルデータを始めとする既存データの解析については順調に進められており,研究実績の概要に記述した成果が得られている.一方で,地上実験の部分については,模擬物質作成に向けた主要なケイ酸塩鉱物の準備段階までは実施できているものの,年度後半に実施予定の模擬物質作成(ケイ酸塩鉱物やグラファイト等との混合により作成)と反射スペクトル測定部分にはやや遅れが生じている(実験設備へのアクセスがd系なくなっているなど理由から).
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の年度で得た結果を受けて,反射スペクトルを用いた地質区分とクレータの形成年代の相関が,古いクレータでは弱くなっている原因として,水星における宇宙風化作用が月と比較して強いことが大きく影響しているのかどうかを,よりローカルなスペクトル解析を行う.具体的には,宇宙風化により一般的には反射スペクトルの短波長側の反射率が下がる赤化と呼ばれる傾向が生じる.そのため,地質区分の領域毎に反射スペクトルの傾きの変化を調べることで,地域毎の宇宙風化作用の評価および地質区分境界との関係評価を行う. 一方で,反射スペクトルを用いた地質区分と元素組成との関係に例外箇所が見つかっていることから,このような例外箇所について,反射スペクトルの特徴を調べることにより,今回これまでにもちている地質区分手法の再評価を行う.2年目の年度で実施がやや遅れている模擬物質の実験室での反射スペクトル取得についても,アクセス制限の状況が改善し次第作業を行う.
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Remarks |
今年度の研究成果の一部を2020年3月の国際学会にて発表予定であったが,該当の学会がキャンセルとなり,発表することができなかった.
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