2018 Fiscal Year Research-status Report
過去108年の関東・東海沖水温の構築:沿岸海洋温暖化の実態と日本気候への影響解明
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18K03737
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 周作 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50547320)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黒潮内側域 / 水温 / 黒潮大蛇行 / 大気海洋相互作用 / 関東地方 / 気候 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、(1)過去100年におよぶ観測資料を収集して黒潮内側域水温の長期変化・長期変動特性を明らかにし、(2)高解像度衛星観測データなどを併用して黒潮内側域水温変動機構を解明し、(3)数値シミュレーション実験を実施することで夏季日本気候への黒潮内側域水温の影響を評価することである。現在、上記3項目を並行して実施しており、本年度に得られた各項目の研究実績概要は次の通りである。 (1)黒潮内側域水温の長期時系列の作成:日本および世界各国研究機関所有の水温資料の収集を終え、品質管理作業を行った。年代ごとに異なる観測手段や観測機器の影響を可能な限り低減するために、補正アルゴリズムを独自に開発して適用した。一連の作業により、100年超時系列を作成する準備が整った。 (2)黒潮内側域水温変動機構:超高解像度人工衛星観測海面水温資料を入手し、最近20年間の内側域海面水温変動を調べた。その結果、内側域のなかでも特に関東・東海沖で変動が卓越することがわかった。そこで、関東・東海沖内側域の水温変動要因を統計的に調べた結果、水温上昇は黒潮蛇行に伴い黒潮から分岐した流れによる暖水供給が主因であるという結論を得た。 (3)黒潮内側域水温の上空大気場への影響評価:関東・東海沖内側域水温が上空大気場および夏季日本気候に及ぼす影響を調べるために、高パフォーマンスの気象庁非静力学大気モデルを使用することにした。まず、大気再解析データと比較・検討を行うことでモデル実験の妥当性を検証した結果、現実を十分に再現していることがわかった。そこで、海水温感度実験を行った結果、関東・東海沖内側域水温が高い時期ほど、その上空から関東・東海地方の平野部にいたるまでの広範囲で気温上昇が起こることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、世界各国研究機関所有の水温データの入手を達成し、過去100年以上におよぶ黒潮内側域水温時系列作成に向けた準備を終えることができた。本研究計画の中で最も困難になるであろうと想定していた作業を初年度内に終えることができた点は大きな進展である。また、同時並行で人工衛星観測資料等の他のデータの入手にも取り掛かり、使用予定データの約95%を入手することができた。そして、入手できたデータから順次解析を開始している。さらに、本年度はスーパーコンピューターを用いた黒潮内側域海水温感度実験にも着手し、モデルの再現性の確認を済ませ、本解析を開始したところである。以上より、最終目標達成に向け極めて順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、収集・品質管理を終えた水温資料を用いることで、関東・東海沖の黒潮内側域水温の100年超時系列を作成する。そして、作成した時系列を用いて内側域水温の長期トレンド(温暖化信号)を検出し、wavelet解析やMEM解析などを通して水温変動の周期性および変調特性について調べる予定である。上記作業と同時並行で今年度実施した海水温感度実験の出力結果の解析を行う。夏季日本気候場への内側域水温の影響を評価するにあたり、現段階では温室効果気体である水蒸気が重要な要素であると着目している。そこで、夏季季節風に伴う南風による関東・東海沖内側域から関東・東海地方への水蒸気輸送過程および気温場へのその影響を調べることを計画している。 得られた研究成果は、順次国内外の学会等で報告することを計画している。
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Causes of Carryover |
計算機環境を年度当初の予定よりも安価に構築することができたため次年度使用額が発生した。次年度は、大気モデル実験の本解析結果および多種の解析資料を管理・保存するために新たに大容量外付けハードディスクを購入する。そして、本年度・次年度の研究成果を米国海洋会議(サンディエゴ)等の学会で発表するための旅費を計上し、得られた研究成果を順次国際学術誌に投稿するので それにかかる英文校閲費および投稿料を計上している。
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Research Products
(2 results)