2018 Fiscal Year Research-status Report
インド洋の南北循環:気候の数十年周期変動の理解に向けて
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18K03750
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
名倉 元樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門, 研究員 (10421877)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド洋 / 水温塩分変動 / 十年周期変動 / 流れ / 季節変動 / ロスビー波 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴフロートの現場観測による水温塩分データを統計的に処理すると共に、これらの観測データを海洋大循環数値モデルに同化したデータを入手して解析し、南インド洋の等密度面上の水温塩分の時間変動を年ごとに調べた。その結果、南インド洋東部中緯度域の海面熱フラックスの経年変動によって海洋表層に水温塩分偏差が生じ、それが海洋循環に流されて海洋内部に広がる過程が明らかになった。これは海面から流入した熱が海洋内部に取り込まれる過程を表している。2004年から2008年までは取り込まれる熱の量が多く、2011年から2014年までは少なかったことも明らかになった。このような変動は南インド洋のニンガルーニーニョと呼ばれる気候変動とそれに伴う海面熱フラックスの変化に関連があると考えられる。インドネシア多島海からインド洋に流入する水塊は水温塩分特性の時間変動をほとんど持たないことも明らかになった。次に、アルゴフロートによって得られた水温塩分観測データ、および深度1000 mにおけるアルゴフロートの漂流速度を用い、インド洋の流れの季節変動を調べた。その結果、インドモンスーンに関連した海上風の一年周期変動に伴い海洋波動が励起され、海面から密度躍層を越えて深度2000 m程度まで伝播することが明らかになった。これは海面で与えられた運動量が海洋内部に伝播する過程を表している。結果を詳しく解析したところ、波動のエネルギーは緯度が高くなるにつれ深い角度で伝播し、深い深度まで達することが明らかになった。このような特性は海洋中緯度の大規模変動に通常卓越すると考えられている準地衡ロスビー波の特性と整合的であり、力学的に矛盾なく解釈できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施する予定であった循環の季節変動の研究、および平成31年度に実施する予定であった水温塩分変動の研究を今年度に行い、それぞれのテーマで一本ずつ論文を国際誌に投稿し、受理され、出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に実施する予定であった循環の強さや流路の変動の年ごとの変化に関する研究を次年度に実施する。循環の季節変動の研究に用いた手法を経年変動に適用する。経年変動スケールにおいては、波動だけではなく中緯度で形成された水塊の移流が循環に影響を与える可能性がある。また、太平洋の気候変動であるエルニーニョによって、インドネシアからインド洋に流入する流れの流量が変化し、インド洋の循環が変化する可能性がある。これらのことにも留意して解析を進める。
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Causes of Carryover |
論文出版費に予想より出費したため、平成31年度に購入するはずであったパソコンを今年度に購入し、今年度に購入する予定であったワークステーションを次年度に購入する等、調整したため。次年度にワークステーションの購入に充てる。
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Research Products
(3 results)