2021 Fiscal Year Research-status Report
インド洋の南北循環:気候の数十年周期変動の理解に向けて
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18K03750
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
名倉 元樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 副主任研究員 (10421877)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド洋 / 波動 / 経年変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴフロート等の現場観測データを同化した海洋再解析データセットの統計解析、および海洋大循環モデルによる数値実験を行い、特に南インド洋に注目して海洋亜表層を伝播する波動の性質およびその原因を調べた。衛星による海面高度観測などから、従来の研究は全球の中緯度に西向きに伝播するロスビー波が存在することを指摘していた。一方、本研究によって発見されたロスビー波は従来知られていたものよりも海洋の深くまで到達し、西向きの伝播速度は1/3程度であった。この海洋亜表層を伝播する波動は南インド洋で最も振幅が大きく、そのエネルギーの源はエルニーニョ現象に関連した熱帯太平洋の海上風の変動であることが明らかになった。本研究によって発見された変動は海洋の熱輸送の理解につながる可能性がある。 次に、簡略化された1.5層線形海洋モデルおよび統計的な大気モデルを使用し、オーストラリア西岸の海面高度の経年変動を予報する簡易的な手法を提案した。エルニーニョ現象に関連した太平洋の海上風の変化は、太平洋からオーストラリア西岸へ伝播する波動を励起し、オーストラリア西岸の海面高度の変化を引き起こすことが知られていた。この性質はオーストラリア西岸の気候変動モードであるニンガルーニーニョ現象の予報などに利用されている。本研究ではこの波動を再現するのに最低限必要な性能を備えた簡易的な予報手法を構築し、オーストラリア西岸の海面高度の変動は13ヶ月前に予報できることを示した。これはより計算コストの高い大気海洋大循環モデルによる予報の性能を評価する際の基準になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋再解析データや数値モデルを用い、一本の主著論文を国際誌に発表した。順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋再解析データや数値モデルを用い、波動の伝播について、南インド洋だけでなく全球を視野に入れて研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの流行で学会がオンライン開催になり旅費を使用しなかった。次年度の学会参加のための旅費に使用予定である。
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Research Products
(6 results)