2019 Fiscal Year Research-status Report
海底火山活動予測のための長期観測に向けた化学・物理観測手法の検証
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18K03756
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
山中 寿朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60343331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 佳史 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50402558)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海底火山 / 火山活動モニタリング / 火山ガスフラックス / 地殻熱流量観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、化学観測と物理観測で得られるデータを併用もしくは互いを補完する形で利用することで、海底火山活動のモニタリング手法を確立することを目指すものである。物理化学観測を各海底火山で継続的に実施することで平穏時の変動範囲を把握しておくことが活動時への移行を判定する上で不可欠である。化学観測は活発な熱水および噴気活動が見られる海底火山では有効であり、マグマ活動の盛衰に短時間で応答すると期待されるが、水柱の化学観測で異常の見られない海底火山においては利用できない。一方、物理観測、特に熱の観測は、マグマ活動の盛衰へのレスポンスは速くなく、浅海域においては底層水の水温変動や堆 積物供給の影響の補正が必要となるが、本調査により補正の係数を得ておけば、海底下の熱源の存在による上昇流の検出や、熱源の規模が推定でき、平穏時の定常状態の把握に有効である。 本年は前年に引き続き、鹿児島湾若尊火山では6月、12月に南星丸によりこれまで通りの化学観測を実施、相模湾手石海丘では6月に化学観測および採泥と地殻熱流量観測を12月に化学観測と採泥を青鷹丸により行った。また、2018年12月に手石海丘火口凹地内および海丘の麓付近海底に設置した温度計の回収を本年度9月に試みたが、無人潜水艇(ROV)の不具合で断念した。 手石海丘については火口凹地内の海底付近でマンガン濃度の顕著な正の異常が前年に引き続き確認され、なんだかの熱的活動がある事がほぼ確実視される。現在、同海域で採取したコア試料から得た間隙水について分析を進めており、マンガンを用いた海底下からの物質フラックスの算出ができないか検討中である。 若尊火山では、火山からの二酸化炭素フラックスの2019年のデータが得られ、これまでの平時の流量の範囲内である事が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海底に設置した水温計の改修が出来ておらず、地殻熱流量観測データの水温変動補正がまだ出来ない状況であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り年2回ずつの観測を若尊火山と手石海丘に行うことを計画しているが、新型コロナウイルし対策のため現在、航海予定が不明瞭となっている。観測に向けた準備は進めているため、航海の実施が決まれば観測を行う。また、手石海丘における底層水の水温変動を記録するために海底に設置した温度計回収のためROVの運用の機会も練習船船長と相談中である。無事温度計が回収できれば、地殻熱流量観測で得られた海底下温度勾配のデータから、手石海丘における地殻熱流量値を算出できるようになる。 手石海丘において火山ガスやマグマ活動もしくはそれを熱源とした熱水活動に由来すると考えられるマンガンの濃度異常を用いた海底下からの物質フラックスについて現在検討を進めている。若尊火山でもマンガンの濃度異常が顕著であるため、その観測値を参考にしながら検討を行っている。 なお、最終年度であるが、予定した観測が行えなかった場合、研究期間の延長を申請する可能性を視野に入れ、観測が実施でき、データが得られれば、海外の学会(American Geophysical UnionのFall meetingを想定)での成果発表も目指す。
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Causes of Carryover |
温度計回収のためROVをテストしたが、潜航途中で故障したためROV運行に関係する費用がほとんど生じなかった。代わりに次年度ROVによる温度計回収を行うために必要な運送費などに充てる。
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