2021 Fiscal Year Research-status Report
金・白金族元素沈殿の成因解明―ナノレベル存在形態解明の新展開
Project/Area Number |
18K03758
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森下 祐一 静岡大学, 防災総合センター, 客員教授 (90358185)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 金 / 白金族元素 / 元素存在形態 / SIMS / 微小領域分析 / 深さ方向分析 / 沈殿機構 / 鉱床成因 |
Outline of Annual Research Achievements |
金 (Au) は多岐に渡る産業で利用されており、一方、白金(Pt)などの白金族元素(PGE)は自動車の排ガス浄化装置に不可欠な元素である。このように重要な貴金属であるが、地球表層の地殻におけるAuの存在度は 1ppb オーダーであり、PGEに至っては 6元素すべてが 1ppb以下の存在度しかないレアメタルである。これら元素はミクロなスケールで偏在している事が多く、存在形態と成因との関係が注目されており、その存在形態を明らかにすることは鉱床成因研究として重要である。 海底の海山壁に成長する鉄マンガンクラスト中にPtが濃集していることが知られており、本研究ではMorishita and Usui (2015)の予察論文に準拠してクラスト試料のSIMS分析を行っている。研究試料は拓洋第五海山から採取した鉄マンガンクラストであり、クラストのMn, Fe, Pt化学組成を、SIMSによる微小領域定量分析により明らかにした。クラストのバルクPt濃度は全岩化学分析などで求められているが、微小領域でのPtの存在をSIMS微小領域分析で明らかにすることが研究の狙いである。 SIMS分析は深さ方向分析に大きな特徴があり、10nm程度の非常に高い深さ方向分解能がある。このため、100万年に2.5mmしか成長しない鉄マンガンクラストの5年間に成長した部分のみの化学組成を明らかにすることが出来た。また、本年度はSIMS微小領域分析で生じたスパッタ孔の深さを精密測定し、分析値が得られた場所に相当する年代を精密に求めた。これらの結果、Ptはクラストの房に含有されているが、その濃度には微小領域での空間的な不均質性があることを明らかにした。この研究成果は深海資源の教科書にSIMS深さ方向微小領域分析法の詳細記載と共にまとめた (Morishita et al, 2022)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した鉄マンガンクラストのSIMS深さ方向微小領域分析に基づく研究に加え、本年度は熱水鉱床試料を用いて研究を進めた。熱水鉱床中の黄鉄鉱について、Morishita et al. (2018; 2019)において開発したSIMSによるAu, As定量分析法に準拠して分析を行った。試料は熱水鉱床から採取されたもので、黄鉄鉱を含む試料のダイヤモンド研磨片を作成した。熱水鉱床のSIMS深さ方向微小領域分析は初めての試みであるため、分析法の確認を含めて様々な場所の様々な態様の黄鉄鉱について大まかな全体の傾向が得られるような分析を行った。 一方、海の熱水鉱床の成因研究に資するため、比較対象として陸の熱水鉱床の成因を研究した。その研究成果として本年度はMorishita and Nishio (2021)及びMorishita and Wada (2021)として論文公表した。以上、コロナ禍の中ではあるが、本研究計画で行う予定の研究が一定程度進展したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に予察的に行った熱水鉱床試料のSIMS深さ方向微小領域分析はまだ世界で行われていない分析であり、本年度の予察分析結果を踏まえて、次年度(最終年度)にはより一層研究目的に適合する精度の高い分析を行う研究計画を立てる予定である。 また、本年度に引き続いて比較対象として、陸の熱水鉱床の成因を明らかにして論文公表を目指す。対象鉱床は伊豆半島南部の鉱床、北海道の上国鉱床、そして米国アラスカ州のポゴ鉱床である。これらの鉱床について、炭酸塩鉱物の炭素・酸素同位体比測定は既に行っているが、今後は同位体比以外のデータと合わせて検討することにより、熱水の起源や進化について明らかにしていく予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は実験室における作業を行って研究が進展したが、昨年度はコロナ禍のため実験室における作業が行えなかったために全体計画が遅れ気味である。研究期間を1年間延長したため、次年度使用額が生じた。 次年度は、本年度に行うことにしていた研究項目の実施と研究のとりまとめを行う。本研究で得られる研究成果の学会発表を行うほか、論文として国際誌に公表するために論文投稿料やオープンアクセス料として予算を使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)