2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigating the formation process of fine-grain Holocene layers in the Tokyo Bay area from a physical-oceanographic perspective
| Project/Area Number |
18K03761
|
|---|
| Research Institution | Kyushu University |
|---|
Principal Investigator |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (80223494)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 古潮汐 / 海水準変動 / 古環境復元 / 完新世 / 縄文海進 / 海面上昇 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
平成３１年度は、前年度に引き続き数値モデルによる古潮汐復元と得られた結果の力学的解釈を進め、国際誌への成果発表を行うとともに、古波浪モデルの構築に着手した。
古潮汐復元に関しては、まず荒川低地に関する最新の地質学的知見を反映させた改訂版を作成し、荒川流域に海水が流入した年代やその範囲を修正した古地形にて再計算を行った。この古地形修正の結果、潮差に関しては現在の荒川低地以外では顕著な差が見られなかった一方、潮流については現在の中川低地の一部でも弱化が認められた。
今回の数値モデル結果からは、事前の予想に反して、潮汐が最も発達したのは、湾長が現在比で約２倍にまで発達した縄文海進と呼ばれる完新世中期ではなく、海面が現在より数十メートル低く、湾長もその後の時代に比べて短かった完新世初期であったことが示唆された。本年度はその理由についてさまざまな角度から検討を行い、その結果、共鳴理論を適用することで完新世を通じた潮汐の弱化を統一的に説明することに成功した。例えば、完新世初期に潮汐が最も発達していたのは、水深が小さかったことが作用して湾の固有周期がその後の時代よりも潮汐周期に近く、湾内の潮汐がより顕著に増幅されたことによると解釈された。今回構築した理論は、数千年単位の潮汐変化のみならず、過去百年間の人間活動による埋め立てや将来予想される海面上昇に伴う内湾の潮汐変化の予測にも適用可能である。さらに、論文査読者とのやりとりを通して、この理論が欧州の河口域など様々な条件下の河川感潮域の潮汐変化に対しても適用可能であり、応用範囲が広いことがわかった。
古波浪復元については、数値モデルを単純化した海上風の設定のもとで駆動し、湾域が最も拡大した完新世中期の古波浪に関する予備実験を行った。その過程で冬季の千葉県内房沿岸の波浪が現在より発達していた可能性が示唆された。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成３１年度は、古潮汐復元の結果解釈に時間がかかり、当初計画にて予定していた古波浪復元について、予備的実験の段階までしか進むことができなかった。その反面、当初予想と異なる古潮汐の推定結果に対し、明快な力学的な解釈を与えることに成功するとともに、論文投稿時の査読者とのやりとりを通じて、今回構築した理論が欧州の河口域など様々な条件下の潮汐変化に対して応用可能であることが確認できた。このことから古潮汐復元に関しては研究計画時の想定を超える成果が得られたと考えられる。以上の点から、本研究の進捗は上記区分の状況にあると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和２年度は、(1) 海陸分布の変化に伴う海上風の変化まで勘案した古波浪復元の遂行と(2) 古潮汐、古波浪の復元結果と地質情報との対比、の２点を行い、その結果を踏まえて東京湾周辺域の沖積層形成に対する潮汐と波浪の影響について、総合的な考察を進める予定である。
|
| Causes of Carryover |
今年度は数値計算の本格化を想定して研究費の使用を進めていたが、波浪モデル構築の遅れたこと、並びに導入を予定していた計算機・ソフトの販売開始が予定より遅れたことから、設備導入を次年度に繰り越した結果、未使用額が発生した。
令和２年度は、本格的な計算の開始に備えた計算設備の導入、東京湾関連資料・データの購入、研究成果の発表、及び論文投稿費用に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)
