2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a quantitative reconstruction method for paleotemperature in freshwater lakes during the Holocene Climatic Optimum
Project/Area Number |
18K03763
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
堂満 華子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (70397206)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セタシジミ / 成長線解析 / 酸素同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,琵琶湖固有種セタシジミの殻の成長線解析と酸素同位体比分析を組み合わせることにより,殻から水温などの環境情報を連続的に読み取ることをめざす.このため最終年度となる令和3年度は,1)成長速度の速い飼育個体の殻の飼育期間中に成長した部位について成長線観察ならびに酸素同位体比測定,2)飼育期間中の飼育現場の水温と水の酸素同位体比そして飼育個体の殻の酸素同位体比にもとづく水温換算式の作成を実施した. まず1)について,研究協力者所属研究機関のマイクロミルと微量粉体回収装置ならびに質量分析計を用いた酸素同位体比分析を実施した結果,測定した5個体の殻の酸素同位体比は約-9.1~-4.8‰の範囲で変動し,成長方向に沿って飼育期間に相応する周期性が認められた.また,成長線観察の結果,灰白~淡黄色の層と紫色の層との互層構造が認められた.紫色の層に挟在する濃い暗紫色を呈する部分は酸素同位体比との対比の結果,初夏から晩夏の水温が高い時期を反映していることが示唆された. 次に2)について最小二乗線形回帰を行った結果,約8~28℃の範囲で式(1)y = -4.02x + 18.16(y: 水温,x: 殻の酸素同位体比から水の酸素同位体比を引いた値)が得られた. この式を琵琶湖で採取された自然個体に適用し水温を求めた結果,約13~28℃の範囲で数年分の季節的な水温変動が復元された.飼育個体では12~13℃を下回ると成長が著しく鈍化したことから,換算式で算出された最低水温は成長停止時の水温を反映していると考えられる.それを加味すると,換算式で算出された水温の変動幅はセタシジミの生息深度である表層10 m程度で観測される水温の季節変動と整合的である. 式の作成に用いたデータに若干の吟味を要するため暫定的ではあるが,この式により琵琶湖表層の数年分の季節的な水温変動の定量的復元が可能となった.
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