2018 Fiscal Year Research-status Report
数値シミュレーションに基づいた誘発地震の発生メカニズムの研究
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18K03775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 真吾 東京大学, 地震研究所, 教授 (20202400)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地震トリガー |
Outline of Annual Research Achievements |
剪断応力依存性を表すパラメータcを導入したNagata 則(Nagata et al., 2012)に, Linker & Dieterich (1992)が導入した,法線応力依存性を表すパラメータを組み込んだRSF則に基づいて地震発生トリガーについて数値シミュレーションを行なった.それまでは円形アスペリティを仮定し剪断応力変動のみを考えていたが,今年度は,剪断および法線応力の両者について,静的および動的な擾乱を与え,time to instability(擾乱を与えてから地震が発生するまでの時間)を求めた.動的応力変動と静的応力変動については これまで知られているCFFの値が同じであってもtime to instability は異なっており,CFFの大きさでトリガー効果を比較することはできない.そこで,動的応力変動が生じたとき,それと等価なトリガー効果を及ぼす静的な CFFeqの評価式を求め,CFFeqにより静的変動の場合と比較したトリガー効果を見積ることができることを示した.CFFeqは変動の時間積分を含む関数となっているため,トリガー効果は周波数依存性はほとんどないと推定されるが,そのことは数値シミュレーションによっても確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Yoshida(2018)では,剪断応力の動的および静的変動が地震をトリガーする効果について論じたが,実際の地震における地震トリガー効果を見積もるためには法線応力の影響も取り入れる必要があった.「研究実績の概要」に記載したようにH30年度に達成できたため,おおむね順調に進展しているといえる.Maeda (研究協力者) et al. (2017)では,粘弾性,複雑な地形形状,不均質速度構造の仮定のもと,任意の震源モデルからの波動(変位場)を安定に計算する最新鋭の数値計算技法が盛り込まれていたが,H30年度末に,変位場だけでなく,応力場も計算できるように改良された.そのことにより,本研究に適用できるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
実際の地震が発生した場合について,トリガー効果を計算する準備が整った.今年度は,南海トラフから沈み込むプレートの境界で発生した地震が,周囲の地震発生域に及ぼす静的および動的な影響を見積もる.
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