2021 Fiscal Year Research-status Report
数値シミュレーションに基づいた誘発地震の発生メカニズムの研究
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18K03775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 真吾 東京大学, 地震研究所, 教授 (20202400)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法線応力に依存するNagata則 / SSEのトリガー |
Outline of Annual Research Achievements |
円形アスペリティを仮定し,地震トリガーに関する数値シミュレーションを行なっている.摩擦則は我々の研究室で求めた,実験データを従来の摩擦則より再現できるNagata則(Nagata et al., 2012)を用いており,信頼性の高いシミュレーションが可能である.本研究ではさらに,法線応力変動の影響も取り入れたものに拡張した.地震サイクルのある時点で,応力擾乱を与えると微小滑りが起こり,強度が下がる(滑り弱化).擾乱の振幅が大きくなるにつれ,大きな滑り弱化が起こり,地震滑りに至るまでの時間が短くなる.これまでの研究により,応力擾乱の周波数依存性はほとんど見られないこと,静的応力擾乱を与えた場合は,動的応力擾乱の場合より小さな応力変化量でトリガーされ,応力変化量の大小だけでトリガー効果を見積もることはできないこと,などを示してきた.また,ある動的応力変化に対し,トリガー効果が等価な静的応力変化量も評価した.今年度は,より現実的な初期法線応力が不均一な場合も扱えるように計算コードの改良を行い,スロースリップイベント(SSE)のトリガーについて調べた.同じ半径のアスペリティでも,摩擦パラメータの値を変化させると不安定―安定状況が連続的に変わり,周期的地震,周期的SSE,安定すべりなどが発生する.周期的SSEが起こっているときに,様々なタイミング,振幅で応力擾乱を与えた.擾乱の振幅が大きくなるにつれ,SSEの発生が早められ,SSE時の滑り速度が速くなり,継続時間が短くなっていく.さらに大きくすると,高速な地震滑りに移行することを示した. また,関連する研究として「シミュレーションによる釜石沖繰り返し地震の予測実験の検証」を日本地球惑星科学連合2021年大会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り,初期法線応力が不均一な場合も扱えるように計算コードの改良を行い,スロースリップイベント(SSE)のトリガーに関するシミュレーションを開始し,いくつかの新しい知見を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに広い範囲でパラメータを変化させ,様々なトリガーパターンを明らかにしていく.三重県沖などで実際に地震波によってトリガーされたスロースリップイベントが説明できるか検討を行う.
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Causes of Carryover |
初期法線応力が不均一な場合も扱えるように計算コードの改良を行い,スロースリップイベント(SSE)のトリガーに関するシミュレーションを開始し,いくつかの新しい知見を得た.次年度はさらに広い範囲でパラメータを変化させ,様々なトリガーパターンを明らかにしていく.三重県沖で実際に地震波によってトリガーされたスロースリップイベント等が説明できるか検討を行う.そのために高性能パソコンを購入する.
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