2021 Fiscal Year Research-status Report
測地データと物理モデルを融合した断層摩擦特性の推定手法の構築
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18K03776
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 淳一 東京大学, 地震研究所, 助教 (70569714)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パラメータ推定 / 事後確率分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、余効変動の物理モデルのパラメータの事後確率分布を測地データに基づいて推定する手法を構築してきた。2020年度までに構築した手法は、パラメータ空間が比較的低次元の場合には有効であることが示された。しかし、パラメータ空間が高次元の場合、多数回のフォワード計算を行うことが必要となるため、計算コストが高くなるという問題点がある。多くの未知パラメータを含むより現実的なモデルのパラメータ推定を可能にするためには、この問題を解決する必要がある。そこで、2021年度は、より少ない回数のフォワード計算に基づき事後確率分布を推定することができる手法の構築に向け、ensemble smoother (ES)とiterative ensemble smoother (IES)による事後確率分布推定の性能を検討した。モデルが線形で事後確率分布がガウス分布の場合、これらの手法から同一の結果が得られ、それらは真の事後確率分布に一致した。一方、モデルが非線形の場合、ESから得られる結果は真の事後確率分布に一致せず、非線形性が強くなるほど真の分布からの乖離が大きくなることが分かった。IESを用いることによりESよりも良い推定結果が得られるが、モデルの非線形性が強くなるほど真の分布に近い推定結果を得るためには多数回の反復が必要であることが分かった。以上の結果から、非線形性の強いモデルに対する事後確率分布推定にはIESがより適していると考えられるが、IESでは反復毎にフォワード計算が必要となるため、現実的な計算コストで推定を行うためには、反復回数を抑えるための手法の改良が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、本研究課題の主要な目的の一つである多数の未知パラメータを含む現実的なモデルのパラメータ推定に向けて、手法構築の方策を検討することができた。また、2020年度までの研究成果が国際誌の論文として出版された。以上のことから、本研究課題は研究目的に沿っておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多数の未知パラメータを含むモデルに適用可能なパラメータ推定手法の開発を引き続き行う。また、断層すべりに対する摩擦構成則と粘弾性緩和を考慮した余効変動の物理モデルを構築する。これらのモデルと手法を用いてモデルパラメータの推定を行い、パラメータ推定手法の性能を評価・検討する。
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Causes of Carryover |
海外の研究者との共同研究や国際学会での成果発表のための海外出張を予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況により実施が困難であったため、旅費を使用しなかった。これらの海外出張は2022年度に延期する。次年度使用額はこれまでの成果をまとめた論文の英文校正費用、論文の印刷費、2022年度の研究に使用するスーパーコンピュータの使用料、延期した海外出張の旅費として使用する予定である。
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