2019 Fiscal Year Research-status Report
Real form of the cap structure of volcanic hydrothermal system and estimate of permeability
Project/Area Number |
18K03777
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
神田 径 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00301755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 伸一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (50357349)
丹保 俊哉 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 学芸課長補佐 (10574311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 比抵抗 / 浸透率 / 透水係数 / 流動カラム実験 / キャップ構造 / 水蒸気噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、室内実験の結果と比較する目的で、現地で透水係数のその場測定が行える土壌透水係数測定装置を導入した。前年度に立山地獄谷で実施した土壌ガス拡散放出量の分布から、放出量に違いが見られた2ヶ所において、実際の土壌(深さ50 cm)の透水係数を測定した。地質学的には、地獄谷の噴気地帯の中心に近い硫黄成分の多い土壌と、粘土化した湖底堆積物の地層であり、透水係数に違いが出ることが期待された。測定の結果、湖成層で測定したほうが一桁小さな透水係数を示した。20℃(1気圧)の水の動粘性係数を仮定すると、土壌浸透率は3.5×10^{-16} (m^2) と計算された。これは、粘土交じりの土壌浸透率としては妥当な値だと考えられ、土壌ガス放出量分布と一応の相関が認められた。しかしながら、1箇所につき水が最低3リットル必要なこと、また、水が土壌に浸透して水位が下がっていく様子を観察しなければならないため、想定より時間がかかり、測定は2ヶ所にとどまった。得られた相関関係を検証するためには、測定場所を増やす必要がある。また、室内実験で用いるための土砂試料を、地獄谷内の異なる温泉群周辺の5か所において採取した。
流動カラム装置を用いた実験については、ゼオライト(沸石)など低比抵抗を示すことが期待できる物質について測定を行った。天然の火山起源の沸石を用いた実験では、水道水の比抵抗値(約170Ωm)が沸石の導入後約1日かけて1/5程度(約30Ωm)まで低下し、期待していた結果が得られた。しかしながら、透水係数については、バルブを完全に開いてもカラム装置からの水の流下はほとんど見られず、計測ができなかった。実験装置は、電極に用いている銅メッシュを通して水が落ちるように設計しており、ガラスビーズを用いた場合は問題がなかったが、粒径の大きな試料では詰まってしまった可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
流動カラム装置を用いた実験については、比抵抗値と透水係数の同時測定に問題が生じている。研究実績の概要でも触れたが、比抵抗の測定では、流動カラム装置の下部に金属メッシュ電極を挟み込み、片方の電流電極としている。ここに土砂試料が溜まっていくと、メッシュを塞いでしまい、液相の下方への流動が起きにくくなっており、土砂による透水係数の減少効果と区別ができていない。前年度のガラスビーズを用いた予備実験時には全く予期しておらず、この問題の解決に時間がかかっている。
また、立山地獄谷での透水係数その場測定実験は比較的うまくいったものの、採取した土壌の成分分析が間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
流動カラム装置を用いた実験では、上記の問題の解決方法を探る。電極の位置を変えたり、メッシュを荒くしたりということが考えられるが、電極の位置を変える場合には、メッシュ状の電極を諦める必要があり、比抵抗推定に必要な均質な電流を流すことができなくなる恐れがある。また、メッシュを荒くすると圧力に対して弱くなるので物理的に可能かどうか工夫が必要である。
立山地獄谷を対象とした実験では、透水係数のその場測定の地点を増やす予定である。その上で、先送りにしている土砂分析を行い、構成鉱物と透水係数との関係を調べる。また、土壌からのガス放出が予想外に大きかったため、初年度に測定した土壌ガスの拡散放出量の繰り返し測定を予定している。年度末にはこれらの結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
本研究計画の一部を修士論文テーマとしていた学生が中途で退学したことにより、実験がしばらくストップしてしまったため、測定装置の改良が進んでいない。また、立山地獄谷で採取した土砂試料の分析が未だ実行されていないため、計上していた分析費用が未使用である。次年度には、これらの費用の執行を行うほか、立山地獄谷における土壌ガス放出量、および土壌透水係数測定を実施のための旅費に用いる。また、年度末には、国際学会での成果発表を検討している。
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