2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies of tsunami and storm deposits in NE Japan and Bangladesh.
Project/Area Number |
18K03778
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
保柳 康一 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30202302)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 海水準変動 / 地球温暖化 / ストーム堆積物 / ベンガルデルタ / サイクロン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年4月以降には,コロナ禍により海外渡航が難しくなり,20年度中のバングラデシュにおけるデルタ平野上での調査と試料採取は,不可能になった.18年度のバングラデシュ調査による研究成果論文Influences of sea level on depositional environment during the last 1000years in the southwestern Bengal delta, Bangladeshが学術誌「Holocene」に掲載された.19年度の2月中に研究協力者の博士課程学生のHaque氏らによる約3週間の調査がバングラデシュ,ボリシャル管区クワカタの海岸で実施でき,海岸線に平行および直交するトランセクトで,ストーム堆積物の1 mのジオスライサー試料を採取した.20年度は,この試料の粒度分析,全有機炭素量,全イオウ量,安定炭素・窒素同位体比,珪藻化石分析をおこない,現地調査結果と合わせた考察によって砂質堆積物は,海側の海岸から運搬されて堆積し,一方,細粒堆積物は莫大な降水量にともなう河川増水の影響によって,河川からの影響も受けていることが明らかになった.これらのことから,この堆積物は多くの降水を伴ってこの地域付近に2007年11月に上陸したサイクロン・シドルによるものであることが推定された.論文を作成して,2021年の1月にMarine Geology誌に投稿した. 一方,これまで研究を進めてきた国内の福島県南相馬市井田川地区の低地における完新統のボーリングコア中のイベント堆積物についての研究については,これまで発表したそれぞれのコアに関する記載論文を基に,この地域の完新世の環境変化とイベント堆積物の関係を明らかにして,論文としてSedimentology誌に投稿した.1ヶ月ほどで査読が戻り,現在,指摘に従って修正中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象の地域の一つを国外のバングラデシュとしているため,このコロナ禍で海外における野外調査が困難となった.しかし,2020年2月に研究協力者の大学院生Haque氏と同じ地球学コースの助教山田昌樹博士が約2週間のバングラデシュ調査を行っていたので,その調査に基づく試料分析と論文化をおこなうことが出来たが,さらなる海外調査と海外研究者との打ち合わせに支障が生じている.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度も5月現在の状況では,すぐにコロナ禍が収まる気配はない.新たな調査と試料採取にバングラデシュへの渡航は21年度中も相変わらず難しいと思われるので,今後も既存の調査資料と試料によって,研究を進めることを主体としなければならないと判断される.国内調査地の福島県南相馬市井田川地域における研究は,この研究で採取した3 m長のジオスライサー試料3本以外のデータは,20年度までに全て論文化済みなので,査読後の修正原稿を早急に提出して掲載をめざす.また,このジオスライサ試料に基づく研究も報告をまとめる予定である.また,査読中のバングラデシュのストーム堆積物の解析についても,査読原稿が戻り次第,修正して再提出する予定である.さらに,バングラデシュのベンガルデルタの先端で引き起こされている,デルタの侵食と海岸線の後退が,相対的海水準の上昇と河川が運搬する堆積物量の人為的減少により,デルタタイプが潮流卓越型からストーム卓越型に変化していることに起因すると考えて論文をまとめた.この論文の早期の掲載も21年度の前半の研究推進方針とする. もし,コロナ禍が収束の兆しを見せ21年度後半に海外調査が可能になれば,海外調査及び,海外研究者との研究打ち合わせをおこないたい.ただ,可能になるにしても海外への渡航は21年度末以降であると思われる.このような研究開始時には予測できなかったコロナ禍の現状によって,調査に基づくこの研究の遅れを取り戻すことはかなり難しい状況である.
|
Causes of Carryover |
コロナ禍において,予定した海外調査ができかったことによる.21年度末にはバングラデシュへの渡航により,現地調査と現地における研究者との打ち合わせをおこないたい.ただ,21年度も渡航できない状況が継続すると,研究費を使うことが難しくなる.もし,この状況が続き,21年度も調査が不可だった場合,研究の継続のため22年度の現地調査で予算の使用ができれば大変ありがたいと考えている.
|