2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies of tsunami and storm deposits in NE Japan and Bangladesh.
Project/Area Number |
18K03778
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
保柳 康一 信州大学, 学術研究院理学系, 特任教授 (30202302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海水準変動 / 温暖化 / 沿岸地形変化 / ストーム堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍により,2020年度に引き続きバングラデシュにおける現地調査を実施することは出来なかった。そこで,2019年度中の調査結果とその時に採取した試料の分析を2020年度におこない,2021年度は論文としてまとめることに集中した。その結果,2020年度に公表した論文1編に続けて2編の論文を2021年度中に公表することが出来た。2020年1月に研究協力者のラジシャヒ大学Haque博士(当時,信州大学大学院博士課程在籍)によって調査されたガンジス-ブラマプトラ-メグナデルタ(GBMデルタ)南西部沿岸Haringhataの沿岸地形の最近30年間の変化について,現地調査と採取した試料の有機化学分析や珪藻化石分析結果をまとめて論文としてProgress in Physical Geographyに投稿した。さらにHaque 博士と研究協力者の山田昌樹博士(信州大学理学部)が2020年2月に調査したバングラデシュ,南西部沿岸地域ボリシャル管区クワカタの海岸での2007年のサイクロンによる堆積物の調査結果とその堆積物の分析結果をまとめてMarine Geology誌に論文として投稿した。これら2論文について,査読を経て前者の論文は2021年8月に,後者の論文については9月に受理となり,それぞれの国際学術誌に2021年末までに公表となった。 前年度の2021年1月に国際誌The Holoceneに掲載されたGBMデルタの1000年間の変遷を堆積物から明らかにした研究を加えて,これら3論文によって近年の温暖化にともなう海面上昇によるGBMデルタの応答を明らかにすることが出来た。海水面の上昇は,沿岸の地形変化をストーム堆積物の形成なども含めて促進している可能性があることをこれらの研究で示すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により,予定した現地での調査は2020-2021年度の2年間にわたって出来なかった。しかし,2018年度および2019年度の調査とその時の採取試料の分析を2020年度と2021年度にそのまとめと追加分析に集中した結果,The Holocene,Marine Geology, Progress in Physical Geography のいずれも国際的に評価の高い学術誌3誌への掲載を2020年度末から2021年度にかけて達成することができた。これらのことから,概ね順調に研究は進んでいると評価出来る。ただし,ストーム堆積物との比較で検討する予定であった国内の津波堆積物の研究まとめは,ほとんど停滞しており,2020年度に国際誌Sedimentologyに投稿したが,その後の事情により,査読後の修正がなされないまま再投稿ができなかった。この研究については再度まとめ直しが必要で,それに基づいてストーム堆積物との比較をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に関しては,論文をまとめることに徹したので,ほとんど研究費を使うことはなかった。2021年度に公表になった2論文については,別途大学などの予算でオープンアクセス化をおこなったので,掲載に係わる費用についても科研費を使うことなく広くアクセス出来る論文とすることが出来た。このことによって,バングラデシュなどの研究者が費用負担無くこの研究成果にアクセスすることが可能となった。そのため,今年度は出来るなら科研費を予定どおりに渡航費用として用いたい。まずは,学位取得後帰国した研究協力者のHaque氏が現地でGBMデルタでの堆積物調査や試料採取を進める予定なので,そこに合流して調査するため日本からバングラデシュへの渡航を予定している。夏は雨期で沿岸地域への移動および調査がきわめて困難であるので,時期は11月から1月の間に設定したい。また,この頃には,コロナ禍も収まっており,自由に渡航出来る状態となっていることが望めると考えている。また,それに引き続き,科研費でHaque氏が来日して,信州大学や高知大学海洋コアセンターにおいて堆積物の分析を予定している。なお, 予算的に可能なら今年度8月にも雨期前にHaque氏が現地調査により採取した堆積物の分析の為に来日出来ればと考えている。おもに,レーザー回析による粒度分析,全有機炭素量分析,安定炭素同位体比分析をおこないたい。 なお,津波堆積物研究のまとめとバングラデシュのストーム堆積物の比較により,両者の区別について,まとめの論文が執筆出来るように進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外渡航が出来ず,バングラデシュにおける現地調査が出来なかったため,2021年度については高知大学海洋コア総合研究センターへ2022年度における分析機器等の使用や共同研究に関する打ち合わせのための旅費のみを支出し,その結果として次年度の使用額が生じた。 2022年度の使用計画は,研究代表者の現地調査のため11月から1月の間に1週間程度のバングラデシュ渡航に研究費の一部を使用することを予定している。また,現地の研究協力者が試料分析と研究打ち合わせのため1から2週間程度来日して,信州大学などに滞在することを予定している。予算的に余裕があれば,夏と冬の2回の来日を予定し,予算的に難しいようなら,どちらか1回の来日としたい。
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Research Products
(5 results)